北朝鮮の金正恩総書記は「自力更生」の掛け声の下、軽工業部門の原材料の国産化、再資源化(リサイクル)を強く呼びかけている。コロナ鎖国によるモノ不足を補うため、国内に存在するありとあらゆる物資をリサイクルして作られた製品は、「8.3製品」と呼ばれる。 隣国の中国では1950年代、不足する鉄鉱石を補うため、鉄製の農機具や鍋、釜を供出させ、溶かして製鉄を行なったものの、使い物にならない低級品ばかりを生み出した。農機具不足から農業生産量が低下し、大量餓死を招いた「大躍進」である。現在の ...

人民に最高指導者の名前で「贈り物」をすることで、世論をつなぎとめるというのが北朝鮮の歴代指導者たちの人心掌握術だ。悪く言えば「もので釣る」ということだが、それに慣れている北朝鮮の人々は、どんなものをもらえるかで最高指導者を「値踏み」する。 毎年話題に上がる、最高指導者の生誕記念日の特別配給。今月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)を控え、平壌市民に名節(お祝いの日)の特別配給が始まった。 ところが、その中身が市民の期待に満たず、むしろ金正恩総書記の権威を傷つけていると、現 ...

北朝鮮の国境の守りを担っているのは、国境警備隊だ。ところが昨年8月、「暴風軍団」として知られる朝鮮人民軍第11軍団の兵力が、国境警備のために派遣されるなどし、国境警備兵力が3倍増強された。 北朝鮮は新型コロナウイルス対策として国境を閉鎖し、これを違法に破る密輸と脱北を以前にも増して厳重に取り締まっている。 だが、それらで生計を立ててきた地域住民とズブズブの関係にある国境警備隊では、警備が務まらないと考えた当局が暴風軍団を増派したのだ。しかし、最近になって暴風軍団に撤収命令が下 ...

米国務省のネッド・プライス報道官は4月6日の会見で、中国による新疆ウイグル自治区のイスラム教徒やチベット族、香港市民に対する人権侵害が懸念されるとして、来年冬の北京五輪をボイコットする可能性を示唆。同盟諸国などと対応を協議していく考えを明らかにした。 これに対し、中国側が即座に猛反発したのは周知のとおりだ。 人権問題が米中関係でここまで重要なテーマになるとは、トランプ前政権時代には想像もできなかった。米国などが北京五輪のボイコットに踏み切れば、習近平指導部が受ける打撃は計り知 ...

北朝鮮体育省が運営するウェブサイト「朝鮮体育」は6日、同国オリンピック委員会が3月25日に開いた総会で、7月に開幕予定の東京五輪・パラリンピックに出場しないことを決定したと明らかにした。 記事によれば、同委員会は「悪性ウイルス感染症(新型コロナウイルス)による世界的な保健危機状況から選手たちを保護するため、委員たちの提起により、第32回オリンピック競技大会に参加しないことを討議決定した」という。 北朝鮮が東京五輪に不参加としたこと自体は、十分に予想されていたことであり、驚くに ...

北朝鮮では新型コロナウイルス対策として、学校の休校措置が続いている。教育省は先月26日に、今月1日から新学期を始めよとの指示を下した。ただし、学校での授業は行わず、教師が児童・生徒の家を周り、学習内容を保存したUSBメモリを配布、遠隔教育(リモート教育)で授業を進める従来の方式を続ける。 また、エリート校にあたる平壌と地方の第1中学校の生徒には、国と親が費用を半分ずつ負担する形でノートパソコンを購入させたが、きちんと配布されているか点検せよとの指示も下している。 このようなリ ...

北朝鮮の金正日総書記は1984年8月3日、平壌市軽工業製品展示場を現地指導した際に「廃材や副産物を使った人民消費品(生活必需品や食料品)生産運動を全群衆的に拡大実施せよ」との指示を下した。これを8.3人民消費品創造運動と呼ぶ。 品物を自宅で作りたいと希望する人に対して当局は許可を出し、それらの製品を扱う専門店も登場した。これが、現在の市場経済の基礎となっているが、このような製品を8.3製品と呼ぶ。 それから36年。北朝鮮はコロナ鎖国により輸入がストップし、深刻なモノ不足に苛ま ...

韓国のNGOである軍人権センターは先月30日、ソウルで開いた討論会で、北朝鮮軍の人権実態調査の結果を発表。調査に協力した脱北者30人のうち26.7%に当たる8人が軍服務中に公開処刑を目撃していたと明らかにした。 同センターは、2019年7月から2020年6月にかけて韓国に入国した脱北者のうち、軍服務経験のある30人を面接調査。また、北朝鮮軍の人権実態に関する文献も分析したという。ちなみに、日時が特定できた7件の公開処刑の執行時期は1990年代が3件、2000年代が3件、201 ...

北朝鮮を訪れる外国人のほとんどが案内されるのが、平壌の万寿台(マンスデ)の丘にそびえ立つ金日成主席、金正日総書記の銅像。いずれも高さ22.5メートルで、奈良・東大寺の大仏(14.7メートル)、上野の西郷隆盛像(3.7メートル)などと比べると、いかに巨大なものであるかがわかる。平壌のものより規模は小さいものの、両氏の銅像は北朝鮮の各地に存在する。 そんな銅像をめぐり、新たな極秘プロジェクトが始まった。その名も「デジタル自動化システム導入垂直型史跡坑道」だ。一体どういうものなのか ...

北朝鮮の首都・平壌は、誰もが自由に住めるところではない。審査を受けて成分(身分)や思想に問題がないと判断された者だけが居住を許され、何かの間違いを犯したら、平壌で生まれ育った人であっても、追放されてしまう。金正恩総書記の住む革命の首都は、犯罪も病気もない「無菌状態」で保たれなければならないのだ。 そんな平壌に居住する特権を得られる人として、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)で規定年数以上を勤務した軍官(将校)とその家族がいる。しかし、決して恵まれた暮らしをしているわけではないようだ。 平 ...

北朝鮮の体制が模範としている家族観は、金日成主席をオボイ(親)と崇め、子どもである人民どうしの結びつきによって作られる家庭が、革命組織の歯車となる、というものだ。そこには儒教やキリスト教、戦前日本の家族国家観など様々な要素の影響がうかがえる。 とはいうものの、理想と現実は異なるのが世の常だ。北朝鮮でも他の国と同じように、不倫が行われている。そして片田舎の農場での不倫関係が、凄惨な殺人へとつながってしまった。 (参考記事:北朝鮮で「サウナ不倫」が流行、格差社会が浮き彫りに) 咸 ...

中国との国境から70キロほど内陸に入った北朝鮮・平安北道(ピョンアンブクト)の宣川(ソンチョン)。朝鮮王朝時代末期から日本の植民地支配下にあった時代にかけて、平壌、黄海道(ファンヘド)の信川(シンチョン)と並び、キリスト教が非常に盛んな地域だった。 しかし、植民地支配下の末期から弾圧が激しくなり、北朝鮮の建国、朝鮮戦争を前後して、弾圧は最高潮に達した。韓国のモトゥンイトル(路傍の石)宣教会のイ・サク牧師は1996年4月、中央日報の取材に、北朝鮮の地下信者から送られてきた手紙の ...

大人数での会食の自粛が呼びかけられている中で明らかになった、厚生労働省職員23人の深夜に及んだ会食。出席者は処分を受け、田村功労大臣が謝罪する事態となった。 会食NGは、国内での新型コロナウイルス感染者の発生を認めていない北朝鮮でも同じだが、違反行為に対する処分は、日本とは比べ物にならないほど厳しい。 咸鏡南道(ハムギョンナムド)端川(タンチョン)市の検徳(コムドク)鉱山の近隣にある村では、ちょっとしたお祝いが行われたのだが、参加者が厳重に処罰される事態となったと、現地のデイ ...

韓国統一省は先月30日、北朝鮮の金正恩総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党宣伝扇動部副部長が、北朝鮮のミサイル発射を受けた文在寅大統領の発言を激しく非難する談話を発表したことに対し「強い遺憾の意」を表明した。 さらに同省関係者は記者団に対し、「一部の表現に対話と協力の相手に対する最低限の尊重や基本的な礼儀を逸脱したと判断される部分があり、遺憾を表明した」と強調した。 金与正氏の強硬姿勢に韓国政府が強く反発するのは、北朝鮮が昨年6月に脱北者団体の対北ビラ散布への報 ...

北朝鮮・咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)郡の南陽(ナミャン)労働者区。地名だけ聞いてもピンとこない読者も多いだろうが、豆満江を挟んだ対岸は、中国吉林省延辺朝鮮族自治州の図們市だ。北朝鮮を間近で眺められ、アクセスもしやすいことから、中国の国内外から多くの観光客が訪れるところだ。 国門と呼ばれる図們税関の高さ11メートルのゲートの屋上に登ると、古ぼけた南陽の町並みや人々の営みが手にとるように見える。観光用として、税関のそばに建てられた朝鮮式の伝統家屋などが立派に整備さ ...

北朝鮮最大の貿易都市、平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)郊外にある朔州(サクチュ)に対して敷かれた新型コロナウイルス対策の封鎖令(ロックダウン)。 一切の外出が許されない状況で、適切な治療を受けられなかった赤ん坊が死亡し、それにショックを受けた父親が自ら命を絶つ事件が発生。地域の世論が悪化したことを受けて、外出禁止令については予定より10日早い今月14日に解除された。 (参考記事:「赤ん坊の死」で繰り上げ終了した北朝鮮のロックダウン) それ以降も、郡の境を越えて ...