1990年代後半に北朝鮮を襲った未曾有の食糧難「苦難の行軍」。全国的に食糧の配給システムが崩壊し、数十万とも言われる餓死者と出した。そんな中でも一部の人々に対しては配給が続けられていた。 安全部(警察署)や保衛部(秘密警察)など、北朝鮮の抑圧体制を末端で支えている治安機関だ。両機関とも、不満分子と見なされた人々に対しては拷問もためらわず、特に保衛部は公開処刑や政治犯収容所の運営も担当している。 つまりは体制維持のための「恐怖政治」の担い手であり、彼らの忠誠心をつなぎとめるため ...

近年の北朝鮮経済の大きな流れは、市場経済と計画経済のハイブリッドな経済体制への移行だ。それに従い、内閣は市場や各機関の経済活動への統制を強めている。その実態は明確になっていない部分も多いものの、当局がこうした取り組みの中で、実質的な税収の拡大を目指していることだけは間違いない。 それは、最近強化されている「イナゴ商人」の取り締まり強化にも現れている。本来、市場で商売するには、市場管理所に市場管理費という名の税金を支払わなければならないが、払えるほどの儲けがない零細商人、負担を ...

世界最悪の人権侵害国家と呼ばれる北朝鮮。それを末端で担っているのは、社会安全省(警察庁)、国家保衛省(秘密警察)などの治安機関だ。その横暴な振る舞いから、一般国民にとっては恐怖の対象であるが、そんな彼らとて、いつも枕を高くして眠れるわけではない。 恨みを買って危害を加えられる事件が、以前から相次いでいる。平安南道(ピョンアンナムド)の成川(ソンチョン)で起きた報復について、現地のデイリーNK内部情報筋が詳細を伝えている。 (参考記事:「報復殺人」で警察官70人死亡…秩序崩壊に ...

脱北者で、北朝鮮の深層情報の入手に関して定評のある韓国紙・東亜日報の記者、チュ・ソンハ氏は8日、自身のYouTubeチャンネルで、北朝鮮の朴泰成(パク・テソン)朝鮮労働党宣伝書記が処刑された可能性が高いと伝えた。 事実なら、きわめて衝撃的な情報だ。朴泰成氏は、今年1月の第8回党大会の時点で党政治局の序列1位であり、党中央委員会の宣伝扇動部長や日本の国会に当たる最高人民会議議長を歴任した文字通りの最高幹部だ。処刑されたとしたら、金正恩総書記の叔父・張成沢(チャン・ソンテク)元党 ...

中国の東北地方で、ひとりの男性の遺体が発見された。後に北朝鮮出身の男性とわかり、中国は北朝鮮に引き取りを要求したが、その処理を巡って遺族が激しい怒りに駆られている。 詳細を伝えた咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、中国との国境に接する穏城(オンソン)郡の保衛部(秘密警察)が、中国の辺防部隊(国境警備隊)から遺体の引き取りを要求されたのは先月中旬のこと。 保衛部は遺体を引き取ったものの、至るところに刺し傷があり、身元がわからないほどひどく損傷していたが ...

北朝鮮では毎年4月15日、金日成主席の生誕を記念する「太陽節」が盛大に祝われる。各地で関連行事が行われ、国営の朝鮮中央通信は先月16日付で、その様子を次のように伝えた。 4月の春の祝日を迎えた人民の感激と歓喜が溢れる中で15日夕、平壌では青年学生の夜会および花火の打ち上げが行われた。 各通りに暗闇が訪れると、市内の青年学生が金日成広場に集まってきた。 招待席をはじめ広場の周辺も、うっとりする花火の世界を見るために集まってきた市民でにぎわった。 首都の夜空に「太陽節を歌う」の歌 ...

(参考記事:【写真】金正恩氏を守るエリート警護員たち) 今年3月。北朝鮮北東部の山奥の村で、女子高生が殺害される事件が起きた。その残忍な手口に加え、犯人の正体が明らかになり、地域社会に衝撃が走っている。事件が起きたのは、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の明川(ミョンチョン)。核実験場があった吉州(キルチュ)郡の豊渓里(プンゲリ)から、山を一つ隔てたところにある。 (参考記事:核実験場に消えた政治犯たち…金正恩氏「被ばく強制労働」隠ぺいか) 郡の安全部(警察署)近隣のマンションの近 ...

羅勲児(ナ・フナ)と言えば、南珍(ナム・ジン)と共に、1970年代の韓国の音楽業界を席巻し、今に至るまで旺盛な活動を続けている伝説的な歌手だ。 朝鮮戦争の戦火を逃れて北朝鮮から避難してきた「失郷(越南)民」の非常に多い釜山で生まれ育ったせいか、作品の中には、「大同江便り」「平壌おばさん」「錆びた鉄路」など、彼らの心情や南北交流への思いを歌った歌も少なくない。1985年には、平壌大劇場でのライブも行なっている。 北朝鮮の若者の間でも広く歌われている彼の曲だが、昨年12月の「反動 ...

抗日パルチザンの子孫など、特権層の子女だけが入学を許される北朝鮮のエリート養成機関の万景台(マンギョンデ)革命学院。康盤石(カン・バンソク)革命学院などと並び、「金氏王朝」とも呼ばれる北朝鮮の現体制を支える「赤い貴族」のためだけに存在する教育機関だ。 朝鮮人民軍の所属だけあって軍隊式の教育が行われ、卒業後は軍の軍官(将校)として任官し、退役後には最高学府の金日成総合大学への入学推薦が得られる。この学校の存在は、万民が平等であるはずの北朝鮮が、実は徹底した階級社会であることの証 ...

北朝鮮の金正恩総書記は先月29日、金日成・金正日主義青年同盟(社会主義愛国青年同盟に改称)第10回大会に「革命の新しい勝利を目指す歴史的進軍で社会主義愛国青年同盟の威力を遺憾なく発揮せよ」と題した書簡を送り、「反社会主義・非社会主義的行為」を一掃せよと呼びかけた。 反社会主義・非社会主義的行為には、金正恩体制が「社会主義にふさわしくない」と考えるあらゆる行いが含まれるが、近年、その筆頭に挙げられているのが韓流をはじめとする違法映像作品の視聴と流布だ。 最高人民会議常任委員会が ...

北朝鮮の金正恩総書記の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会副部長は2日、韓国の脱北者団体が北朝鮮に向けビラを飛ばしたことを非難する談話を発表し、「相応の行動を検討」するとして報復を示唆した。朝鮮中央通信が伝えた。 韓国の脱北者団体「自由北韓運動連合」によると、同団体は先月25~29日、京畿道と江原道の非武装地帯付近から、金正恩体制を非難するビラ50万枚と小冊子500冊、1ドル札5000枚をくくりつけた大型風船10個を北朝鮮へ向けて飛ばした。 こうした動きを巡って北 ...

北朝鮮外務省は2日、報道官談話を発表し、米国務省が北朝鮮の人権状況を批判したのは金正恩総書記に対する「冒涜(ぼうとく)」だとして強く反発した。 米国務省のプライス報道官は先月28日、韓国で脱北者や複数の民間団体が北朝鮮の人権状況を広く知らせるために毎年行っている「北朝鮮自由週間」に合わせて声明を発表。北朝鮮が新型コロナウイルス対策として中朝国境の無断侵入者を射殺するよう命じたことに「驚愕している」としながら、北朝鮮当局による人権侵害について「金正恩体制に説明責任を果たすよう求 ...

4月27日、韓国デイリーNK編集部に一本の電話がかかって来た。「外国にいる」「現地の電話からかけている」と明らかにした男性は、「全世界に必ず暴露すべき」だと語気を強めた。 自らの素性を明らかにせず、キムとだけ名乗ったこの男性は「(他のことは質問せず)自分の話だけを聞いてくれ、これを世界に知らせてくれ」と述べた。それは海外で長年にわたってデイリーNKが発信する記事を読み続けてきたという男性の叫びだった。 20分余りの通話で明らかにされたのは、北朝鮮の最高検察所がロシアで行なった ...

封建時代の身分制度を打破し、皆が平等な社会主義体制を打ち立てたはずの北朝鮮。しかし、現実は全く異なり、むしろ前近代より強化されたと言っても過言ではない身分制度に国民一人ひとりが縛り付けられている。 「成分」と呼ばれる身分の低い者は、軍、大学、朝鮮労働党に入ることが制限されるなど、社会的不利益を受ける一方で、金日成氏と抗日パルチザンを共にしていた人物やその子孫は、様々な面で優遇され「赤い貴族」とも呼ばれる。 (参考記事:【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層 ...

コロナ禍初期の昨年3月に、北朝鮮の金正恩総書記が参加して執り行われた平壌総合病院の着工式。昨年10月10日の朝鮮労働党創立75周年の前に完成させ、記念日を華やかに飾るというのが当初の計画だったが、大規模な病院なのに工期がわずか半年という「無茶振り」だ。 そしてこれに、コロナ対策の国境封鎖と貿易停止が重なった。国営の朝鮮中央通信は、昨年9月12日の「平壌総合病院建設の外部仕上げ工事が進められる」という記事を配信したのを最後に、報道をピタリと止めているが、やはり工事が進んでいなか ...

かつて中国に存在していた「収容遣送」という制度。戸籍地として登録した地域を許可なく離脱して摘発されれば、元いた地域に送り返すというものだ。この法的根拠であった「都市浮浪者収容送還弁法」廃止のきっかけとなったのは、前途ある若者の死だ。 湖南省出身の服飾デザイナー孫志剛さんが2003年、就職のために引っ越した広東省広州市で、外出中に警察に逮捕され、収容所で3日後に死亡するという事件が発生。メディアの調査報道により世論が紛糾し、移動と居住の制限が緩和されるようになった。 そもそも中 ...