北朝鮮「赤い貴族」の隠微な内幕…超エリート少年が集団死

抗日パルチザンの子孫など、特権層の子女だけが入学を許される北朝鮮のエリート養成機関の万景台(マンギョンデ)革命学院。康盤石(カン・バンソク)革命学院などと並び、「金氏王朝」とも呼ばれる北朝鮮の現体制を支える「赤い貴族」のためだけに存在する教育機関だ。

朝鮮人民軍の所属だけあって軍隊式の教育が行われ、卒業後は軍の軍官(将校)として任官し、退役後には最高学府の金日成総合大学への入学推薦が得られる。この学校の存在は、万民が平等であるはずの北朝鮮が、実は徹底した階級社会であることの証左でもある。

その入学試験を巡って、黒いカネが飛び交うところも、今の北朝鮮を表している。

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そんな学校で昨秋、新型コロナウイルスのクラスターが発生したことが、今になって明らかになった。

デイリーNKの内部情報筋によると、クラスター発生の事実は、4月初めに行われた人民軍党(朝鮮労働党朝鮮人民軍委員会)の総会で報告された。

万景台革命学院は、昨年10月10日に開催された軍事パレードに生徒を参加させるために、昨年5月から生徒に練習をさせていた。そんな最中の同年9月、高熱、咳、呼吸困難、下痢、喀血など新型コロナウイルス感染を疑わせる症状を見せ、倒れる生徒が続出した。結局、基礎疾患を抱える生徒を中心に12人が死亡した。

学院側は、軍事パレードの練習のために充分に睡眠時間が確保できず、免疫が低下して病気になったようだと、責任逃れを図った。死因は敗血症肺炎などとされているが、軍当局内ではコロナ感染によるものであったとの見方が既成事実となっているようだ。

今回の総会の総和(総括)では、「革命遺児女(抗日パルチザンの子孫)を集団死させたのは大事件だ、この事態を掌握、統制できなかった院長にも責任がある」「園児(生徒)が集団生活を行う万景台革命学院が伝染病の防疫にさらに徹底的に臨むべきなのに、重い欠陥が現れた」などと批判が提起された。

そしてオ・リョンテク院長に対して、少将から大佐に降格させる処分が下された。しかし、3ヶ月もすれば元に戻るだろうと、情報筋は見ている。

オ・ジェウォン初代院長の息子であるオ・リョンテク院長は、2012年1月に金正恩総書記が現地指導に訪れた際、1時間に渡って単独談話(案内)した人物で、そのときに「贈り物の星」、つまり階級を下賜された。

(参考記事:金正恩氏、万景台革命学院を訪問

それにより大佐から少将に進級したが、受け取ったのが「贈り物の星」であったことから、実際には2階級特進の中将の待遇を受けてきた。

クラスター発生の責任を取らされながらも、依然として院長の座に留まっている。また、金正恩氏から「父親から受け継ぎ、命の尽きる瞬間まで革命の後備隊の園児たちの責任を負う仕事を私とともにやろう」との言葉を直々にかけられたことから、3ヶ月ほどすれば元の少将の階級に戻されるだろうと、情報筋は見ている。

(参考記事:北朝鮮軍「コロナ隔離施設」で4000人死亡か

一方で、万景台革命学院内の病院長、後方副院長、死者を最も多く出した大隊の長と政治指導員は除隊させられ、学院から追放となった。

オ院長は宴会自粛、冠婚葬祭も減らせとの防疫方針が下された後にも、それを破って様々な行事に参加していたことがわかった。万景台革命学院の政治委員が高級レストランの清流館を2日間貸し切りにして、子どもの結婚式を行なったが、院長のみならず部下全員が参加した。院長はこれについても別途、党から処分を受け、政治委員は大佐から上佐に降格処分を受け、党から厳重警告を受けた。