コチェビとは、ストリート・チルドレンやホームレスを指す北朝鮮の用語。韓国JTBCは2011年、韓国に住む2万3000人の脱北者のうち、200人が元コチェビだと報じているが、その全体像は明らかになっていない。 食糧事情や経済状況の影響で増減を繰り返しているようだが、2020年1月以降のコロナ鎖国により深刻な食糧難に襲われている現在の北朝鮮で、その数が増えていることは想像に難くない。社会安全省(警察庁)は、コチェビが増加しているとして、取り締まり命令を下した。 咸鏡北道(ハムギョ ...

北朝鮮の平安南道(ピョンアンナムド)孟山(メンサン)出身のキムさん。17歳だった1950年、徴兵されて朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の一兵士として、朝鮮戦争を戦った。1952年に負傷して除隊。その後、ある地方にある銃弾を作る軍需工場に配属され、戦傷者(当時の称号、現在は戦争老兵)として-待遇を受け、平凡な暮らしを送っていた。 北朝鮮で毎年7月27日は「戦勝節」――つまり朝鮮戦争に「勝利した」ことを祝う日だ。この日に合わせて、かつては数年に1回、今では毎年、その労をねぎらうための「老兵 ...

北朝鮮の中国と国境を接する地域には、数多くの送金ブローカーが存在する。脱北して中国や韓国で暮らす人々が、北朝鮮に残してきた家族に宛てた送金を届ける役割を果たしている。 両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)に住む、40代男性のパクさんもそのひとり。郊外nのアジトででカネのやり取りをしていたところ、保衛部(秘密警察)に踏み込まれた。当時、パクさんの手中にあったのは現金2万元(約39万4000円)。「見逃してくれ」と頼み込むパクさんに、保衛員はこんな話をしたという。 「半分半分にし ...

北朝鮮の北部にある慈江道(チャガンド)。軍需工場が密集し、他の地域との行き来が厳しく制限されている。 そのため、他の地域とは異なり市場経済が発達しておらず、その代わりに潤沢な配給が行われてきた。それは、各地で多数の餓死者を出した1990年代後半の「苦難の行軍」のころでも変わらなかった。そのせいで、慈江道の人々は「生活力」を鍛える機会を失った。 そんな慈江道の人々に、食糧難が襲いかかった。 現地のデイリーNK内部情報筋によると、軍需工場に務める人の中には、国からの配給だけでは足 ...

北朝鮮当局が、性売買行為の集中取り締まりを行っていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が今月2日付で報じている。 咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)に住む情報筋はRFAに対し、「最近、全国的に増加している性売買行為を根絶するための中央の指示が下された。これを受け、市安全部(警察)と青年同盟が合同作戦を開始し、若者に対する思想教育と、性売買行為に対する集中取り締まりを行っている」と明らかにした。 情報筋はまた、「今回の取り締まりは、平壌の某中央機関の幹 ...

国際社会の経済制裁と新型コロナウイルス対策の国境封鎖(貿易停止)などで、経済難が深まる一方の北朝鮮。国内では、生き延びる道を求めて、犯罪に走る人が増えているとされる。 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、平安南道(ピョンアンナムド)の徳川(トクチョン)で最近、ある猟奇事件が現地の人々に衝撃を与えた。 現地住民はRFAの取材に対し、「7月末、地元に住む30代の男性が山中にある墓をこっそり掘り返して遺体の脳髄を取り出し、『精神病の治療薬だ』として販売したのが露呈し ...

北朝鮮の両江道(リャンガンド)で先月24日、物資調達に繰り出した兵士3人が民間人により集団暴行を受ける事件が発生した。 デイリーNKの現地情報筋によると3人は道内の三水(サムス)郡に駐屯する第10軍団の所属だ。彼らは27日の「戦勝節」(朝鮮戦争の休戦記念日)を前に物資調達に出かけた際、郡内の村で空腹のあまり豚肉を盗んだところを、安全部(警察)が組織した民間人の糾察隊(取り締まり班)に見つかった。 3人は抵抗したが、相手が悪かった。糾察隊の隊員5人は軍の特殊部隊出身で、3人を叩 ...

北朝鮮は「批判」で成り立っている社会だ。すべての国民は、職場や学校などで週1回以上、「生活総和」と呼ばれる自己批判の会に参加する。日々あったことを「生活総和手帳」に書き留め、それを元に自分の行動や考え方を批判する。批判は、他の参加者からも受ける。 そして、その拡大版と言えるのが「思想闘争会議」だ。この場では多くの人が見守る中、壇上に引き立てられてきた人々が次から次へと厳しい批判に晒される。だが、思想を叩き直すという本来の目的が変質し、娯楽の少ない北朝鮮の人々にとって、面白い見 ...

北朝鮮は本当に、ウクライナ東部に労働者(一部は兵士)を派遣するかもしれない。 ロシアのアレクサンドル・マツェゴラ駐北朝鮮大使は7月18日、ロシア国内メディアとのインタビューで「北朝鮮と共和国の協力の可能性は非常に幅広い」と話した。マツェゴラ氏が言及した「共和国」とはウクライナ東部で親ロシア派勢力が独立を宣言した「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」のことだ。北朝鮮は13日、ロシアとシリアに続き両地域を国家として承認した。 また、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RF ...

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の第8軍団の125軽歩旅団で、7月初めに3人の新兵が脱営(脱走)する事件が起きた。北朝鮮軍では、暴言や暴力、性暴力や飢えに耐えかねて逃げ出す事件はしばしば起きている。 部隊が、中国との国境に接する平安北道(ピョンアンブクト)東林(トンリム)にあることから、脱北の可能性も浮上していたが、3人は脱走から20日後に、自らの足で部隊に戻ったと、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。 (参考記事:北朝鮮軍「エリート部隊」で起きていた隠微な不祥事) その後の取り調べで3 ...

2000年代以降、IT技術の発展に力を入れている北朝鮮。昨年5月には逓信省、電子工業省、国家情報化局を合わせた情報産業省を発足させ、この分野を集中的に育成する姿勢を見せている。  その努力は、様々な形で成果を上げている。外国の製薬会社や仮想通貨交換所、金融機関にハッキングを仕掛けるサイバー攻撃部隊がその一つと言えよう。ただ、そうした能力の攻撃の矛先は、北朝鮮自身にも向けられる。  北朝鮮で使われている携帯電話には、韓流コンテンツなど禁止されたものを再生できなくしたり、国の承認 ...

北朝鮮の平壌市安全局(警視庁)が最近、大規模な組織売春グループを摘発した事件についてはすでに本欄で述べた。40代男性のA氏をトップとするグループは、平壌郊外の平城(ピョンソン)、全国第2の都市である咸興(ハムン)、中朝国境の新義州(シニジュ)、リゾート地でもある元山(ウォンサン)、そして工業都市の沙里院(サリウォン)に拠点を置き、デリヘル業を営んでいた。 客は朝鮮労働党や安全局、保衛局(秘密警察)、検察所など主要機関の高位幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)で、女性を客の自宅な ...

韓国の文在寅前政権が2019年に亡命を求めた脱北漁民2人を板門店から北朝鮮に強制送還した事件を巡り、板門店を管轄する国連軍は当時、同政権によって「騙された」とする証言が出た。 国連軍の司令官は米韓連合軍司令官を兼務するアメリカ軍人であり、米軍と「ほぼ一体」と言っても言い過ぎではなかろう。 板門店から脱北者を送還するには、国連軍の承認が必要だ。2019年当時、国連軍が強制送還を承認していたかどうかは、ことの本質を知る上で重要な要素と言える。 文在寅政権は当時、漁民2人が船内で同 ...

北朝鮮が昨年3月から、1400キロにも及ぶ中国との国境沿いに、脱北や密輸を防ぐためのコンクリート壁の建設を進めてきた。 コンクリート壁とは言っても、冷戦期に東西ドイツを隔てていた「ベルリンの壁」のようなものではなく、コンクリートの柱の間に高圧電流が流れるフェンスを張るというものだ。 北朝鮮は新型コロナウイルス対策で国境を封鎖して以降、国境エリアに立ち入った人々を射殺するなどしている。高圧電流の流れるフェンスが完成すれば、文字通り「死の壁」となる。 (参考記事:「気絶、失禁する ...

北朝鮮の平壌市安全局(警視庁)は、全国の大都市で組織的な売春斡旋を行ってきた組織を摘発し、関係者ら30人を逮捕した。 平壌のデイリーNK内部情報筋によると、逮捕されたのは組織のトップである40代男性のA氏ら30人。 彼らは、平壌郊外の物流の拠点、平安南道(ピョンアンナムド)平城(ピョンソン)、全国第2の都市である咸鏡南道(ハムギョンナムド)咸興(ハムン)、貿易都市の平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)、江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)、黄海北道(ファンヘブク ...

かつて、北朝鮮は中国人観光客で溢れかえっていた。陸続きで手軽に行けて、昔の自国の姿を彷彿とさせる光景が楽しめるとあって、北朝鮮を訪れる人が急増。韓国貿易投資振興公社(KOTRA)は報告書で、中国国家旅游局の資料として、2018年に北朝鮮を訪れた中国人は120万人で、前年比で5割増だったと明らかにした。 国連制裁に抵触せずして、多額の外貨が転がり込んでくる観光業に目をつけた北朝鮮は、主に中国人客の誘致に力を入れたのだが、その狙いが大成功。一時は、キャパシティを超えてしまい、受け ...