北朝鮮の新興富裕層(ニューリッチ)である「トンジュ」は、経済が混乱状態に陥った1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時代に、勤め先の工場の資材などを売り払って資金を作り、ヤミ金業などを営んで財産を築いた。 彼らは国の政策によって浮沈を繰り返してきた。最近の金正恩総書記は、市場経済化を抑制し、1980年代以前の社会主義計画経済体制に戻ろうとしているようで、そのあおりで多くのトンジュが没落した。 生き残ったトンジュは改めて権力と結託し、国の政策に便乗して儲けを確保している。たと ...

お笑いタレント「ダウンタウン」の松本人志氏の性加害疑惑報道が波紋を広げる中、ほかにも、芸能人らによるハラスメント告発が相次いでいる。 内容は全く異なるが、韓国デイリーNK編集部にも告発が届いた。告発者はロシア・イルクーツクにいる北朝鮮人労働者のAさんで、その対象は彼らの管理を行う建設会社の保衛員(秘密警察)のチェ・ソンチョル氏だ。拷問や公開処刑などの手段を総動員して金正恩体制の恐怖政治を支える保衛員だが、このチェ氏は一見、温和な印象があるという。ただ、裏ではやはり、非道の限り ...

北朝鮮は、居住や移動の自由がない世界的に見ても珍しい国だ。登録した居住地から市や郡の境界線を越えて別の地域に移動するためには、旅行証と呼ばれる国内用パスポートが必要だ。日本で例えると、東京から埼玉に移動するために許可が要る、リアル「翔んで埼玉」の世界だ。 市や郡の境界線上には10号哨所と呼ばれる検問所があり、旅行証を提示した上で、荷物検査を受けようやく通過が認められる。しかし、市場経済が進捗の度合いを深めていた2010年代には、検問所に定期的にワイロを払っているタクシーやソビ ...

中国の丹東や瀋陽など遼寧省では、正確な数は不明だが、数万人の北朝鮮女性が働いている。いずれも北朝鮮の貿易会社が中国企業との契約に基づいて派遣した労働者だが、北朝鮮国民の新規雇用を禁じた国連安保理の制裁を回避するために、短期滞在ビザや技能実習ビザを取得するなどして、法的には「労働者ではない」という形になっている。 これまでは水産加工工場、アパレル工場、北朝鮮レストランが主な派遣先だったが、最近では農業分野への進出が伝えられている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じ ...

北朝鮮は中国と同様、日本の福島第一原子力発電所からの放射能処理水放流に強く反対しているが、このほど漁獲に対する放射能検査を行うことに関する内閣水産省の指示が各水産事業所に下されたもようだ。 江原道(カンウォンド)消息筋は8日、韓国デイリーNK編集部に対し、「水産省が日本の汚染水放流を受けて、魚に対する放射能検出検査装置を水産部門が自ら導入し、遠海で獲った魚から検査を進めるようにとの指示を先月末、各水産事業所に下した」と伝えた。 消息筋によると、水産省は今回の指示で、各水産事業 ...

北朝鮮は、世界で唯一の「税金のない国」を謳っている。 故金日成主席は1974年2月、朝鮮労働党中央委員会第5期第8次全員会議において、「古い社会の遺物」である税金制度を完全になくすことについて討議、決定することを指示。それを受けて最高人民会議は同年3月、「税金制度を完全になくすことについて」との法令を発表し、4月1日に世界初の税金のない国になったことを宣言した。この日は「税金制度廃止の日」に定められている。 しかし、インフラの使用料、募金などの名目で、法的根拠のない物品が税金 ...

北朝鮮の国営・高麗航空は今月22日、平壌北京線の運行を3年7カ月ぶりに再開、隔日で運行されている。また、ロシアのウラジオストクからの便も25日に再開された。 陸路は16日に再開しており、滞在期間が終わっても帰国できずにいた留学生、派遣労働者、貿易関係者の帰国ラッシュとなっている。ただ、家族との再会を喜ぶ嬉しいものではなく、気が重くなるもののようだ。 (参考記事:在中国留学生の北朝鮮帰国がついに始まる) 久しぶりの帰国したとたん、空港から国家保衛省(秘密警察)の要員により連行さ ...

北朝鮮が先月31日に強行した軍事偵察衛星の打ち上げが失敗に終わったことで、韓国メディアの報道には「幹部の責任が問われるのではないか」との論調が見られる。 特に「危ない」と見られているのが、朝鮮労働党中央軍事委員会の李炳哲(リ・ビョンチョル)副委員長だ。空軍司令官出身の高官である李氏は同月29日、打ち上げ実施の宣言を発表。この計画の責任者であると考えられている。 「許されぬ領域」 仮に、李氏の指揮に落ち度があって打ち上げが失敗したと少しでも疑われた場合、金正恩総書記は何らかの罰 ...

北朝鮮の「尊敬するお嬢さま」こと、金正恩総書記の娘、キム・ジュエさん。国営の朝鮮中央通信は19日、金正恩氏の国家宇宙開発局の現地指導に同行するジュエさんの写真を配信した。 また、15日の太陽節(故金日成主席の生誕記念日)に合わせて行われた内閣と国防省対抗のスポーツ大会も観覧する写真を公開するなど、記事では言及しない場合にも、その動向を頻繁に伝えている。 (参考記事:金正恩氏、娘と「太陽節」記念スポーツ大会を観戦) まだ10歳の彼女だが、国民受けはかなり悪い。米政府系のラジオ・ ...

韓国統一省は3月31日、脱北者500人余りの証言に基づき作成した北朝鮮人権報告書を公開した。 韓国政府は2016年に施行された北朝鮮人権法に基づき、聞き取り調査を開始され、翌年から報告書を毎年まとめていた。これまでは脱北者の個人情報漏えいの恐れや北朝鮮の反発を考慮して非公開とされていたが、北朝鮮の人権問題に積極的な尹錫悦政権が公開に踏み切った。 妊婦が躍る動画 報告書には、殺人などの凶悪犯罪だけでなく、薬物取引や韓流コンテンツの視聴・流布、宗教や占いなどの迷信行為など、様々な ...

これまでにも本欄で言及したことだが、北朝鮮の朝鮮労働党法務部は今年4月4日、「反動思想文化排撃法違反少年に対する意見対策案」という提議書を中央に提出。金正恩総書記による1号批准を受けた上で、8日から全国の司法機関、安全機関に対し、韓流コンテンツなどを隠れて視聴していた少年らに対する処罰を緩和するよう指示を下した。 平壌と黄海南道(ファンヘナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、反動思想文化排撃法に違反したとして摘発される人が急増している中で、大量の未成年を思想犯にするわけに ...

北朝鮮の国営朝鮮中央通信は10日、「国の戦争抑止力と核反撃能力を検証、判定し、敵に厳重な警告を送るための朝鮮人民軍戦術核運用部隊の軍事訓練が、9月25日から10月9日まで行われた」と、一連のミサイル発射をまとめて報じた。 これは、定例の米韓合同軍事演習「ウルチ・フリーダム・シールド」を受けてのものだが、訓練に合わせて、一般国民に対して15日分の食糧を備蓄せよとの指示が下され、兵士に対しては「今すぐに戦争が起きるかもしれない」として、万全の体制を整えよとの指示が下された。 「食 ...

先月8日に発生した安倍晋三元首相に対する銃撃事件。北朝鮮の国営メディアは、今に至るまで事件について一切触れていない。 事件のことは、一部の幹部にだけ伝えられた。また、国家保衛省(秘密警察)は各地方の保衛局に事件のことを伝え、革命の首脳部(金正恩総書記)の安全保障事業に総力を傾けよとの指示を出している。 泳がせて監視 一方で、一般住民の間にも、少しずつ事件のことは伝わりつつあるようだが、このことを人に話したとして、ひとりの女性が逮捕された。容疑は流言飛語(デマ)を流したというも ...

北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は、10日に開かれた全国非常防疫総括会議で、国内に新型コロナウイルスが流入したのは、韓国から脱北者が送り込んだビラなどが汚染されていたことによるものとして、韓国に対する報復を示唆する内容の発言を行った。 この様子は、国営メディアを通じて報じられたが、その内容に、北朝鮮国民からは不満の声が上がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。 「威厳がない」 平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、1 ...

北朝鮮で強化されている、中国キャリアの携帯電話の所持、使用に対する取り締まり。運悪く取り締まりに引っかかってしまった女性が、取調べ中の残虐行為により死亡したと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。 事件の概要は次のようなものだ。 咸鏡北道保衛局(秘密警察)は先月10日、中国キャリアの携帯電話を使っていたようで、30代女性のキムさんを逮捕し、スパイ容疑者を勾留する拘禁所にぶち込んだ。公開処刑や政治犯収容所の運営を担う保衛当局は、金正恩体制の恐怖政治を支 ...

北朝鮮で、大学教授や大学当局、大学の朝鮮労働党委員会幹部など「学内の権力」によって学生らの人権が蹂躙される事件が後を絶たない。 昨年4月には、黄海北道(ファンヘブクト)にある沙里院(サリウォン)工業大学で、党書記の地位にあった50代の男性が、40人もの女子学生に権力型性犯罪を働いていたことが暴露された。 公開処刑も また前年には、首都・平壌の総合レジャー施設で組織的な売春を行っていたグループが摘発され、一味に平壌音楽舞踊大学や平壌演劇映画大学の教授らが加担していたことがわかっ ...