「世界に暴露してくれ」ある北朝鮮兵士がロシアからかけてきた一本の電話
自らの素性を明らかにせず、キムとだけ名乗ったこの男性は「(他のことは質問せず)自分の話だけを聞いてくれ、これを世界に知らせてくれ」と述べた。それは海外で長年にわたってデイリーNKが発信する記事を読み続けてきたという男性の叫びだった。
20分余りの通話で明らかにされたのは、北朝鮮の最高検察所がロシアで行なった、脱北者拉致事件の詳細だった。その訛りから彼が北朝鮮出身であろうことが推測できたが、噂話に尾ひれが付きがちなのが、北朝鮮情報の常だ。取材班は事実確認のために、ロシア国内の別の情報筋に連絡を取ったところ、キム氏の証言内容と一致する話に加え、さらなる情報を提供してくれた。以下は、それらをまとめて再構成したものだ。
北朝鮮は、数多くの労働者をロシアの建設現場に送り込んでいるが、その中には朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士もいる。7総局(工兵総局)傘下の錦陵会社の分隊長だったチュ・ギョンチョルさんもその中のひとりだった。
北朝鮮は、海外に派遣した労働者に「忠誠の資金(上納金)」のノルマを割り当てている。