文在寅政権下で増幅する韓国「金融危機」の現実的リスク

「韓国の国内総生産(GDP)に対する家計負債は、経済協力開発機構(OECD)平均の64.9%より高い。不動産価格の下落で担保住宅の価格が落ち、雇用の悪化で家計の所得が減れば、家計負債の問題が深刻になるだろう」

李氏が語るとおり、韓国の家計の借入の多くは不動産投資に向かっている。

韓国も日本と同様に、国民皆年金制度を持っている。しかし、日本の国民年金が1961年に発足したのと比べ、皆年金の成立が1999年と歴史は短い。

その間、韓国では急激な経済成長と人口増大の中で、不動産価格の上昇が続いてきた。公的年金制度がない中では、老後の生活設計のために人々の意識が不動産に向かったのは必然だった。お父さんが会社から受け取った給料は、銀行に預金するよりも不動産の購入に回した方が賢明だったのだ。そして、そうしたカネの流れが、不動産価格の上昇をさらに煽った。1987年には、同年の地価上昇で生まれた不労所得が国民総生産の36%を占め、全労働者の賃金の85%にもなったという。

しかし、バブル崩壊で日本の「土地神話」が崩れ去ったように、不動産価格が永遠に上がり続けることなどあり得ない。問題は、韓国ではいつ、どのようにして大幅な不動産価格の下落が起きるかだ。

韓国の文在寅政権にとっては今、住宅価格の安定が喫緊の課題となっている。上がり過ぎた住宅価格は、もはや庶民の手の届かない水準になった。大統領選で進歩系の文在寅氏に票を投じた庶民の多くが、住宅価格が適正な水準で落ち着くことを願った。ところが文在寅政権の発足以降も、住宅価格は上がり続けた。