文在寅政権下で増幅する韓国「金融危機」の現実的リスク

支持率の下落が止まらない文在寅政権は、住宅価格を安定させようと半狂乱だ。もう20回以上も対策を打っており、残された手は数少ない。最も有力なのは、自ら打ち出した過去の不動産対策を、潔く撤回することだ。しかしそれは、政権と与党・共に民主党が自らの無能を認めることにつながる。来年の春にはソウル市長選と釜山市長選、再来年には大統領選が控える今の段階で、そうした行動に出るのは難しい。

余裕を失った政権がどのような愚挙で不動産市場を破壊するか、想像するだけで鳥肌が立つ。

また、政権や行政の腐敗そのものが、金融市場にダメージを与える可能性もある。

文在寅政権の支持率が落ち続けている原因のひとつに、秋美愛(チュ・ミエ)法相と尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の対立激化がある。

文在寅政権が尹錫悦氏への攻撃を強めているのは、尹氏が政権高官や与党関係者の疑惑に対して容赦ない捜査を進めてきたからだ。秋美愛氏は、いわば尹氏を追い落とすための「刺客」であり、多くの韓国国民はそのことを見抜いている。

(参考記事:「大統領の弾劾・逮捕も視野」文在寅が最も恐れる致命的な事件

政権や与党関係者の関与が疑われている事件のひとつに、ライム資産運用とオプティマス資産運用という2つの私募ファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)による金融詐欺事件がある。被害規模2000億円以上とも言われる両事件では、老後資金を託した庶民らが血の涙を流したのに、捜査は遅々として進んでいない。秋美愛氏が、担当検事たちを左遷してしまったからだ。

そしてさらに問題なのは、責任者への処罰や再発防止策が徹底されない間に、金融市場ではさらに恐ろしい事態が進行している可能性があることだ。韓国の月刊誌『新東亜』12月号によれば、韓国では文在寅政権の発足後に361もの私募ファンドが償還中止に至っており、被害規模は6兆ウォン以上になるという。同誌は「償還中止は、事実上の破産だ」としている。

もちろん、私募ファンドは東学アリたちが売買する上場株とはまったく異なるものであり、ファンドの破たんが金融市場の混乱につながるとは限らない。だがライムとオプティマスの犯罪を防げなかったのは、韓国の金融当局である金融監督院の能力不足や、販売手数料欲しさに詐欺的商品を売りまくった大手金融機関のモラルハザードのせいだと言われる。

そんな理由からこれほどの規模の金融詐欺事件が起きたならば、金融庁の解体的再編は避けられなかったことだろう。しかし、文在寅政権は一連の事件発覚後も、金融当局の改革にまったく手を付けていない。このように安全装置の脆弱な市場に飛び込んだ東学アリたちは、地雷原に遠足に来た子供も同然である。

ただでさえ、新型コロナウイルスが経済にどのような影響を与えるか、なおも見極めがつかないのが現在の状況だ。それに加え、文在寅政権というリスクを抱え込んだ韓国経済は、決して