国家安全保衛部――北朝鮮「秘密警察」の知られざる内幕

さらに、捜査に投入された「登録情報員」が取る行動は四つの課程に分かれるという。たとえば、北朝鮮内部の重要文書が中国に秘密裏に持ち出される事件の摘発はどのように行われるか。S氏は次のようにシミュレートする。

△1:任務課程-対象(容疑者)が韓国、日本、米国など他国の指示で動いているのかどうかを調べる。対象人物が自らの口で背景を語るようになるまで信頼関係を構築し、その内容を証拠とする。
△2:実行課程-対象が工作活動のために何を行い、誰と会っているか把握する。
△3:報告課程-対象が工作活動の進捗を誰に報告し、完遂時にどういった行動をとるのか。関連する電話を盗聴し、録音する。
△4:逮捕課程-対象が自分の任務を遂行し、中国で文書の受け渡しを行う瞬間に逮捕する。この際、情報源も共に逮捕される。

「陰謀」事件を最優先

「登録情報員」は、このすべての課程を直接行う。特筆すべきは、容疑者が逮捕される際に情報員も一緒に逮捕され、後でコッソリと釈放されるというち密さだ。