「金正恩は最初に何人か処刑する」独特の統治ノウハウの落とし穴

ただその一方で、官僚の失態や怠慢を問責しての公開処刑は、今回はまだ確認されていない。韓国に亡命した元駐英北朝鮮公使の太永浩(テ・ヨンホ)氏は近著『3階書記室の暗号 太永浩の証言』(原題)で、次のように証言している。

「金正恩は大規模な建設事業や国家的な記念事業を行う際に、最初に必ず1人か2人を処刑する。それも事業の開始段階で殺すものだから、皆、縮み上がってしまう」

太永浩氏によれば、金正恩氏がこのようなやり方を始めたのは2012年末、錦繍山太陽宮殿を大規模改修したときからだったという。宮殿前の広場に花壇を造成するため、各機関に作業区画が割り当てられた。担当区画の土を3メートルの深さで掘り起こし、害虫駆除を行って埋め戻したのだが、国家産業美術指導部は工期を守るのが難しくなるや、1.5メートルだけ掘り起こして埋め戻した。これがバレて、局長1人が金正恩の命令により銃殺されたという。