「眠っているうちに」死者数万人、北朝鮮庶民が震える「冬の夜の恐怖」
朝鮮半島の伝統的な暖房と言えば「オンドル」だ。かつては焚き口に薪をくべて火を付けて床を暖める方式だったが、1920年代から徐々に練炭に取って代わられた。韓国では1950年代から爆発的に普及が始まった。
それに伴い、一酸化炭素中毒が激増した。1970年9月21日の中央日報によると、1968年にソウル市内で一酸化炭素中毒になった人は1万2520人で、亡くなった人は545人に達した。これは1967年度に伝染病にかかった人が1843人(うち死亡137人)より遥かに多い。1982年5月4日の京郷新聞は、28年間に亡くなった人は6万人、何らかの後遺症を抱えている人は294万人というさらに衝撃的な数字を紹介している。
1970年代から家の外に設置したボイラーに練炭を入れて温めたお湯を床の下に通す方式が普及し、中毒事故は減少し始めた。1990年代以降、練炭からガス、電気、灯油のオンドルが普及し、練炭はほとんどの家庭から姿を消した。今では一酸化炭素中毒で亡くなる人は年間10人前後だ。「夜中に中毒になりかけて逃げようにも足腰が立たず、這って外に出て助かった」などという練炭にまつわる体験談は、韓国ではノスタルジーを持って語られるようになった。
ところが北朝鮮では、なおも現在進行形の現実なのである。