「街は生気を失い、人々はゾンビのように徘徊した」…北朝鮮「大量餓死」の記憶

ただ、国民経済のなし崩し的な資本主義化が進行し、貧富の格差が広がっている今、貧困層は食べ物などの価格がわずかに上昇しただけでも大きな影響を受ける。

また、経済制裁に金正恩氏の失政が重なることで、思わぬ展開が生まれることもあり得る。関係各国はそのことをくれぐれも忘れず、無辜の民が犠牲にならぬよう、慎重の上にも慎重を期すべきだろう。

抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

北朝鮮が未曾有の食糧難「苦難の行軍」の真っ只中にあった1998年。平壌の南にある黄海北道(ファンヘブクト)の松林(ソンリム)市の黄海製鉄所で事件は起きた。

事の発端は数ヶ月前に遡る。製鉄所の支配人、責任秘書が集まって10万人近い従業員のための食料をいかにして調達するかを議論していた。

出された結論は、製鉄所で製造している圧延鉄板を中国に輸出してトウモロコシと交換するというもの。彼らは中央に報告せず事を進めることにした。報告したところで、圧延鉄板は軍需用という理由で輸出が許可されないことが明らかだったからだ。

黄海製鉄所所有の漁船は圧延鉄板を載せて中国に向かった。副支配人や販売課長など幹部が船に乗り込んで、中国との交渉に当たった。その結果、船は大量のトウモロコシを積んで戻ってくることができた。

拷問の末に公開銃殺

ところが、港に着いた瞬間に幹部、乗組員全員が朝鮮人民軍の防諜機関である保衛指令部に逮捕されてしまった。どうやら誰かが密告したようだ。