「感謝する理由ない」北朝鮮の児童が金正恩称賛に反発…教師も両親も驚愕

毎年のように深刻な自然災害に襲われる北朝鮮では、昨年7月、中国との国境を流れる鴨緑江が大雨で氾濫した。この氾濫により、北朝鮮の公式発表でも死者は1500人、家を失った者は1万5000人に達した。実際の死者や被災者の数はこれをはるかに上回ると見られている。

鴨緑江から遠く離れた平安南道(ピョンアンナムド)安州(アンジュ)では被害の有無は不明であるが、市内の小学校では、災害復興に尽力した金正恩総書記の「偉大さ」を讃える教育が行われている。しかし、子どもたちの反応は意外なものであった。現地のデイリーNK内部情報筋がこれを伝えた。

安州市内のある初級学校(小学校)で先月末に起きた出来事である。この学校では毎朝、朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を読む「読報時間」を設けている。この日、担任教師は4月25日付の『労働新聞』に掲載された「父なる金正恩元帥が平安北道と慈江道、両江道の水害地域の新設学校に楽器を贈る」という記事を取り上げた。以下、朝鮮中央通信の報道から一部抜粋する。

父なる金正恩元帥は、平安北道と慈江道、両江道の水害地域に新しく建てられた学校にピアノとアコーディオン、ギター、御恩琴、伽倻琴、ハーモニカなどの楽器を贈った。

(中略)金正恩元帥は、すっかり様変わりした故郷の村に誇るに足る素晴らしい学校を建てるようにし、近代的な教具・校具と教育設備、スポーツ器具を贈ったのに続いて、再び数多くの楽器も贈る大いなる恩情を施した。

このような記事を読み、その内容について討論を行う「偉大性教養」は、金正恩氏を神格化する教育の一環である。

通常、読報時間はクラスの思想副委員長(朝鮮少年団の幹部)が司会を務める場合が多いが、この日は担任教師が担当した。教師は記事を読み上げ、次のように子どもたちに説いた。

「元帥様(金委員長)の愛は限りない」
「このような愛のおかげで私たちは世界に羨むもののない幸福を享受している」

しかし、子どもたちの反応は教師の意図とはまったく異なるものであった。