韓国の尹錫悦大統領が憎悪する「従北反国家勢力」の正体
韓国の尹錫悦大統領は3日夜、突如として「非常戒厳」を宣布。これを受け、戒厳司令官に就いた陸軍参謀総長の朴安洙(パク・アンス)大将が「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じる」とする布告を出し、戒厳軍部隊が国会に進入する事態となった。
ところが、非常戒厳は宣布から約2時間半後、国会の議決を受けて撤回され、尹錫悦が振るった強権は一夜ともたず瓦解することとなった。
尹錫悦は宣布の会見で、行政官に対する弾劾訴追を乱発し、政府予算の大幅削減を強要する野党・共に民主党を激しく非難。「韓国国会は犯罪者集団の巣窟となり、立法独裁を通じて国家の司法行政システムを麻痺させ、自由民主主義体制の転覆を図っています」とまで述べた。
そして、「韓国国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に剔抉(てっけつ)し、自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布します」と、その目的を明らかにしている。
強制捜査を受けていた「ある男」
尹錫悦はつまり、共に民主党がイコール「従北反国家勢力」だと言っているのだろうか。そのようにも読めるが、明確に言い切ってはいない。いずれにしても、尹錫悦は共に民主党の行動が「内乱を企てる明確な反国家行為」だと言いながら、それがなぜ「従北」――北朝鮮の意に従ったものだと言えるかについては、まったく説明していない。
仮に、共に民主党の行動が本当に北朝鮮の意に従ったものであると証明できるならば、尹錫悦の非常戒厳宣布はある程度、正当化されるかもしれない。今のところ、そのような展開が生まれる見込みは少ないが、韓国で何が起きているかを知るうえで、「従北反国家勢力」が何を指しているかを探ってみる意味はあるだろう。