韓国の尹錫悦大統領が憎悪する「従北反国家勢力」の正体

ソウル警察庁安保捜査局は10月30日午前、国家保安法違反の疑いで、西大門区にある市民団体の事務室や、代表である男性A氏の自宅などを強制捜査した。容疑は、政府の許可なく北朝鮮関係者と接触を持ったとする国家保安法違反だ。この団体は9月28日、「尹錫悦政権退陣時局大会」を主導したが、「すべて合法的な活動だ」と反発している。

この男性A氏は2010年8月、情報機関・国家情報院(国情院)によって逮捕・起訴されている。2004年12月から2007年11月にかけて、中国・北京や北朝鮮・開城などで朝鮮労働党統一戦線部の工作員と会って指示を受け、反米活動などを繰り広げたとする容疑だった。

A氏は、韓国の左派勢力ではよく知られた存在だ。2008年5月2日から100日以上続き、当時の李明博政権を窮地に追い込んだ「米国産(狂牛病)牛肉輸入反対ろうそくデモ」で、中心的役割を負ったひとりだった。

当時のろうそくデモは、初期には「ろうそく文化祭」と呼ばれ平和的な様相だった。ところが徐々に過激化し、興奮した群衆が街にあふれ出て警察バスをロープで引きずり倒すなど破壊行為に及んだ。集会参加者の顔ぶれも制服姿の女子高生からベビーカーを押して出てきた主婦、会社員、市民団体、労働組合員、そして覆面をした「戦闘部隊」へと変わった。

「真の目標は政権崩壊」

デモを大規模化・過激化させたのは、「牛を利用して作る化粧品·生理用ナプキンなど600種の製品を使用しても狂牛病に伝染する」「韓国人の95%が狂牛病に脆弱な遺伝子を持っている」などとする根拠のないデマだった。そして、そうして世論を煽ったのが、市民団体の連合体である「狂牛病国民対策会議」だった。前出の男性A氏の団体は、その中核組織のひとつだった。