韓国の尹錫悦大統領が憎悪する「従北反国家勢力」の正体

韓国の裁判所は一審から上告審まで一貫して、A氏らの反米活動の違法を認め有罪としながらも、北朝鮮から指示を受けたとする部分については証拠不十分により無罪としたのだ。

A氏はその後も、親北勢力の中心的存在であり続けているが、しばらくは南北間での平和的な交流事業の開催などが主な活動だった。ところが北朝鮮の金正恩総書記が南北の平和統一を放棄し、韓国を「第一の敵国」とする姿勢を打ち出すと、運動方針を転換。今年、巨大労組や宗教界とともに結成した新たな運動連合体を足場に、より戦闘的な動きを見せている。

この連合体の「出帆宣言文」は冒頭で、次のように述べている。

「韓米政府の『力による平和』基調と対北圧迫政策が全面化され、北側は「南北関係が敵対的な二つの国家関係で固着化」したと宣言した。国家安保を口実に平和主権と生命安保を踏みにじる尹錫悦政権の暴圧的な政治が続く中、朝鮮半島の軍事危機は戦争以来、最高のレベルへと駆け上がっている」

こうした北朝鮮の主張と重なる環境認識の下、尹政権との全面対決に動いており、その取り組みは言うまでもなく、国会の進歩勢力とも連携している。

検事だからこそ知る「限界」

だが、憲法により言論の自由が保障された韓国において、こうした認識を持ち、政府を批判すること自体はまったく合法だ。