【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」
第70条 公民は労働の権利を有する。労働の能力があるすべての公民は希望と才能に応じて職業を選択し、安定した職場と労働条件を保証される。公民の能力に応じて働き、労働の量と質に応じて分配を受け取る。
これは、職業選択の自由を謳った北朝鮮の社会主義憲法の条文だ。ところが、現実は異なる。北朝鮮には身分制度が存在し、職業選択はもちろんのこと、社会生活のすべての面において優遇または差別を受ける。この身分制度は一般的に「成分制度」などと呼ばれる。
北朝鮮当局はその存在を決して認めようとしないが、多くの脱北者の証言により、その存在は明らかになっている。また、制度の存在を裏付ける文書も存在する。
筆者は最近、この成分制度を説明する北朝鮮の公式文書、「住民登録参考書」(以下、参考書)を入手した。1993年に社会安全部(現人民保安省)出版社から出版された絶対秘密文書である。当局はその存在を決して認めようとしないが、多くの脱北者の証言により、その存在は明らかになっている。
この本については、朝鮮日報が2007年に紹介しているが、ここで改めて、より詳しく説明する。
出身成分、社会成分
北朝鮮国民が持つ身分は「出身成分」、「社会成分」そして「階層」の3つで、満17歳になる日に与えられる。ただし、海外出身者の場合は北朝鮮入国後に与えられる。まずは、成分について説明する。