【徹底解説】北朝鮮の身分制度「出身成分」「社会成分」「階層」
•人民軍や人民警備隊で(勤務後に)除隊した場合
•教化所などから出所した場合
•本人の階級的土台、社会政治生活の経緯、家族、親戚などを客観的に把握できず、成分と階層が規定できない場合
•罪科がなくなったり、取り消された場合
現行の階層は特殊、核心、基本、動揺、敵対
1993年の参考書には、成分変更に関する規定がなかったが、筆者がよく知る保安署での勤務経験を持つ脱北者の証言によると、1990年代後半の深化組事件の後で階層制度が変わり、特殊、核心、基本、動揺、敵対の5つの階層に分けられた。また、動揺から基本へ、基本から核心に変更する方法もできた。ただし、特殊階層に上がったり、敵対階層から抜け出す方法は存在しない。
(参考記事:血の粛清「深化組事件」の真実を語る)「参考書」には成分と階層以外にも、政治犯収容所に関する記述がある。政治犯収容所の公式名称は管理所で、1993年当時、第18号管理所は安全部所属で、残りは保衛部第7局所属だった。これは管理所の警備兵として勤務経験を持つ安明哲さんの証言と一致する。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
参考書にあるものだけでなく、ないものも重要だ。金日成主席、金正日総書記など金氏一家の成分や階層に関する情報はない。金氏一家の成員は登録対象ではないと何度も聞いているが、そんな事実がここで確認された形だ。
また、参考書には金日成氏の抗日パルチザン部隊について言及されているが、朝鮮人民革命軍に関する記述ははなかった。北朝鮮は、金日成氏の朝鮮人民革命軍こそが、日本帝国主義を撃ち破った勢力だと主張している。
許されざる制度的な身分制度
最近ではかなり緩和されたとの報道もあるが、金日成時代には成分が良くない人は出世の道が断たれていた。平壌に行くことも、大学や軍隊に入ることもできず、配給の面でも差別を受けた。逆に、金日成部隊にいたパルチザンの子孫は、いとも簡単に出世し、エリートグループに入ることができた。
言い換えると、成分、階層制度の目的は、北朝鮮の政権そのものが世襲制であるのと動揺に、北朝鮮社会そのものを世襲制にすることにある。北朝鮮が、新たな封建主義的な制度を構築したことが、この参考書に現れているのだ。
国連人種差別撤廃委員会は2002年、「『世系』に基づく差別がカーストおよびそれに類似する地位の世襲制度等の、人権の平等な享有を妨げ、または害する社会階層化の形態に基づく集団の構成員に対する差別を含む」との一般的勧告29が策定された。つまり、北朝鮮の身分制度は、差別であり、決して許されない人権侵害ということだ。