愛人女優を「ズタズタにして処刑」した父親への金正恩の反感

平壌で今年3月6、7の両日、朝鮮労働党の第2回党初級宣伝活動家大会が行われた。初級宣伝活動家とは、行政機関や工場など末端の職場単位で置かれた党組織で、思想教育やプロパガンダを担当する人々だ。

金正恩党委員長はこの大会に送った書簡の中で、次のように述べている。

「偉大性教育で重要なのは、首領は人民とかけ離れた存在ではなく、人民と生死苦楽をともにし、人民の幸福のために献身する、人民の領導者であるということを、深く認識させることです。もし、偉大性を強調するために、首領の革命活動と風貌を神秘化するならば、真実を隠してしまうことになります」

これは、金正日氏に対する「皮肉」以外の何ものでもない。金正日氏は、自らの父(正恩氏には祖父)である故金日成主席の神格化を主導し、体制の基盤を固めた。また、自分自身は容易に外部に姿をさらさず、謎めいた雰囲気を身にまとい続けていた。

金正恩氏が否定した「神秘化された首領」とは、金正日氏に他ならないのだ。金正恩氏が一度ならず二度までも金正恩氏を(遠回しにしながらも)公然と批判したからには、彼ら父子に関するある「説」を想起せずにはいられない。