【解説】警察庁「対総連捜査マニュアル」はいかにして作られたのか…その時代背景と「対北600億円送金」の真相

ただ、朝鮮総連が送るカネは軍部などには直接回らず、本国における朝鮮総連の元締めと言われた朝鮮労働党幹部、康寛周(カン・グァンジュ/別名・姜周一=カン・ジュイル)氏(故人)の「資金源」になっていたという説がある。

この康氏こそは、許宗萬(ホ・ジョンマン)朝鮮総連議長の盟友だったのだが、教条的かつ高圧的な指導、そして強引なカネ集めによって、朝鮮総連の末端活動家たちからは蛇蠍のように嫌われていた。

朝鮮総連が康氏の「資金源」になっていたというのは、彼がすべて着服していたというのではなく、党上層部への上納金などをひねり出す財源として使っていたという意味だ。

朝鮮総連はもともと朝鮮労働党・統一戦線部の管轄下にあったのが、時期によっては党の対外連絡部の管轄に移されていた。

これも実は、統一戦線部の副部長だった康氏が、対外連絡部長に栄転する際に引っこ抜いていったのだという噂がある。

公安警察のミッション遂行

そして、このときの統一戦線部のトップはただでさえ康氏とウマが合わないと言われた金容淳党(キム・ヨンスン)書記(故人)で、総連の引っこ抜きをめぐっても大喧嘩になったと伝えられる。