【解説】警察庁「対総連捜査マニュアル」はいかにして作られたのか…その時代背景と「対北600億円送金」の真相

数年を経ずして原子炉、冷却塔などがその外観を整え、写真解析によって初歩的な原子炉施設であると結論付けたが、それが民生用か軍事用かの判断は据え置かれた。

しかし1986年3月には、施設周辺に円筒状のクレーターが見つかる。

核爆弾は、通常の火薬のように簡単には誘爆しない。球状に固められたプルトニウムを中央に納めた、やはり球状のパッケージの内周りを高性能爆薬で敷き詰め、これを寸分の狂いもなく同時に起爆することで、内側に圧力を集中させる。そうしないことには核分裂の連鎖が起きず、原子核爆発には至らない。

第2次世界大戦中に行われた広島型原爆の開発でも、これが難しかったと言われる。寧辺に見つかったクレーターの形状は、この高精度爆発実験の際に生じるものと酷似していた。核兵器開発の疑いが、次第に高まっていった。

準戦時体制に突入

さらに1990年2月、アメリカの偵察衛星が今度は、寧辺で使用済み核燃料の再処理工場と思われる施設が稼動していることを確認。これが原爆用のプルトニウム抽出施設と目され、アメリカを先頭に、国際社会は北朝鮮にIAEA(国際原子力機関)の査察受け入れを迫った。