【実録 北朝鮮ヤクザの世界(下)】社会主義国で「経済ヤクザ」が誕生するまで

「北朝鮮には『成分』という身分制度がある。親父は職場での事故死だったので成分は上がった。しかし、親父がそれまで党員として学校や地域にはかっていた便宜がなくなった。そこから、手のひらを返すように俺に対する周りの態度が変わったんだよ」

それまではエリート街道に乗り、学校でも学級長だった白氏だが、この経験を通じて「体制は裏切る」ことを本能的に知る。

この頃から表の顔を保つ一方で、裏側では腕っぷしの強い人間を集めて、愚連隊を組織していく。これが自然と拡大して「パッキ派」というヤクザ組織に発展していった。

父の影響力はなくなったが、成分のおかげでそれなりにいい職種に就いた白氏は、裏社会での影響力もどんどん強めていった。表の肩書きも裏社会の拡大のために積極的に利用していった。

表と裏の顔を使い分ける

しかし、覚せい剤などの薬物には手を染めなかったという。