「中国離れ」「ロシア接近」の代償 北朝鮮経済が直面する崩壊リスク

北朝鮮の非公式経済(市場経済)の要衝と言えば、北東部の清津(チョンジン)と首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)である。前者は全国最大と言われる巨大市場を擁し、後者は国内外から集まった物資を大消費地の平壌や全国各地に送り出す機能を果たしている。

平城市場に次ぐ規模を誇る玉田(オクチョン)市場は、独特の流通ネットワークを形成していることで知られるが、韓国のサンドタイムズによると、この機能が今年3月初旬から麻痺状態に陥っているという。

国境経済が機能停止

北朝鮮全域の価格基準を定めてきたこの市場の機能停止は、単なる地域経済の問題にとどまらず、崩壊した中央集権的な計画経済に代わって30年にわたり機能してきた市場経済システムそのものが根本から揺らいでいる兆候であるとの見方が出ている。

北朝鮮経済に詳しい情報筋がサンドタイムズに語ったところによると、当局が貿易に対する統制を強化したことで、中国との国境に面する新義州(シニジュ)と恵山(ヘサン)からの物資の流入が遮断され、玉田市場への入荷が途絶え、機能が事実上停止した。

約1万人の商人が集まる玉田市場は、全国の商人が商品を仕入れる卸売流通の中心地であり、中国から輸入された工業製品、食料品、衣類用原材料などが列車で平城まで運ばれ、その後、オートバイや担ぎ屋の手で市場に持ち込まれる。そして「タルリギ」と呼ばれる卸売業者を通じて全国に送り出される。

平城玉田市場はまた、超短期衣類生産体制を備えていた。原材料が入荷すると、裁断、縫製、アイロンがけを経て半日で製品ができる家内工業システムが形成されていた。一家に一人は縫製技術者であり、関連産業まで含めると約8万人が従事していたとされる。

穀物価格が暴騰

北朝鮮経済を研究するクァク・イノク教授は「平城で卸売される衣類加工品は中国から原材料(布地)を持ち込み、コンピューターを利用して作られる」「韓国のドラマや映画をモニタリングし、芸能人が着用する服と同じように裁断・設計し、サンプルを作って大量生産する」と述べた。