「座して死を待ちはしない」北朝鮮の民衆が当局管理の倉庫を襲撃

北朝鮮の市場で、取り締まりで品物を取り上げられた商人たちが、激しい抗議行動を行った。平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事件が起きたのは今月中旬のこと。順川(スンチョン)市内の市場で、安全部(警察署)が、販売が禁止されている個人製造の無許可医薬品、農薬、電力消費量の多い外国製の電化製品などに対する集中的な取り締まりを行い、これらを販売していた商人から全量を押収した。
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北朝鮮の一般大衆はコロナ鎖国による経済難と食糧難に苦しんでいるが、苦しいのはモノを売る側の商人とて同じだ。売り物をすべて奪われ、商売ができなくなってしまった商人は、取り締まりに不満を抱き行動を起こした。

権力に反抗すれば、恐ろしい結果を招きかねないことを知りながらも、座して飢え死にを待つことはしないというわけだ。
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情報筋の説明によると、売り物を押収された商人20人は、市場管理所の倉庫にそれらが保管されていることを知り、夜になってからおしかけて、警備員に酒を飲ませた後で倉庫の扉をハンマーで破壊、中にあった商品をすべて持ち去った。

事件の発生は、朝鮮労働党順川市委員会に報告され、安全部は集団行動に参加した20人を逮捕したとのことだ。党委員会、安全部は、今回の事件に刑法209条の集団的騒動罪を適用することとし、事件の先頭にたった2人には労働教化刑(懲役刑)3年、残りには労働鍛錬刑(懲役刑)1年の判決を下した。

法規定では騒動の主導者に対しては5年から10年の労働教化刑に処すと定めていることから、かなり軽めの処分が下された形だ。

情報筋は、当局が商人から売り物を奪うのは昨日今日のことではないが、経済難が続き、このような各種の異常現象が起きていると伝えた。

北朝鮮では昨年10月にも、両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)の市場で、取り締まりに来た警官隊と女性商人の一団が大乱闘になり、30人が労働鍛錬隊に送られる事件も起きている。
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