幹部200人を死地へ送り…金正恩「最恐組織」に漂う腐臭

ミイラ取りがミイラになってしまったのだろうか。

北朝鮮の82連合指揮部は、反社会主義・非社会主義行為(風紀の乱れと犯罪行為)を取り締まるために中央から各地方に送り込まれた組織だ。

地方の安全部(警察署)や保衛部(秘密警察)は、地元住民からワイロを受け取って癒着し、これら行為をじゅうぶんに取締まれていない。82連合指揮部は、そこからの脱却を図り、効果的に取り締まりを行うのを目的に、2020年12月の最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で採択された「反動的思想・文化排撃法」に基づき派遣された。

一説には、82連合指揮部を中心とした取締りにより、これまでに安全部や保衛部の幹部200人が摘発され、死地に追いやられたと言われる。
(参考記事:引き出された300人…北朝鮮「令嬢処刑」の衝撃場面

ところが、北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の82連合指揮部が、中央の連合指揮部の検閲(監査)を受けることになった。一体どういうことなのだろうか。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

検閲が始まったのは今月14日で、今月いっぱい行われる。その理由は複数ある。まず、咸鏡北道82連合指揮部は昨年12月、中央から「人員をすべて入れ替えよ」との指示を受けたが、勝手に半分の入れ替えで済ませてしまった。また、今年1月から3月までの第1四半期の取り締まり実績が、昨年同期比で悪化した。それだけではない。

道内の貿易機関が、国家非常防疫方針を破って中国と密貿易を行っているのを知りながら、見て見ぬ振りをしていたのだ。また、個人からは中国キャリアの携帯電話を没収する一方で、貿易業者には携帯電話をレンタル・販売するなど、様々な不正行為を行ってきた。
(参考記事:北朝鮮の秘密警察が組織ぐるみ「携帯電話マフィア」の内幕

さらには職員の食糧配給においても不正が発覚した。82連合指揮部は各組織からの寄せ集めで、職員は元いた組織から食糧配給を受け取ることになっている。ところが、今年1月には家族分と称して連合指揮部として白米の配給を受けた上で、元いた組織からも二重に配給を受け取っていたのだ。

コロナ鎖国により、一般庶民が食糧不足に苦しむ中、咸鏡北道82連合指揮部は、その絶対的地位を利用して、私服を肥やしていたということだ。

そもそも、82連合指揮部が派遣されたのは、上述の通り、既存の治安機関が元から腐敗している上に、地域とのしがらみで身動きが取れなくなっているためだが、82連合指揮部もわずか1年半で、同じように腐敗してしまったのだ。

今回の検閲では、国家非常防疫方針を無視して、国から承認を受けた貿易だと嘘をついて密貿易を行っていた貿易機関の幹部多数と、82連合指揮部の複数のイルクン(幹部)が逮捕されたが、いずれも死刑になるのではないかと噂されていると情報筋は伝えた。

ただ、今まで明るみに出た不正行為は氷山の一角に過ぎず、検閲が進むにつれ、さらなる不正行為が発覚すると見られ、関与していた幹部やその家族、親戚は震え上がっているとのことだ。