衰弱・文在寅政権に金正恩氏が見舞う「トドメ」の一撃
北朝鮮・平壌の金日成競技場で15日午後5時半から、2022年サッカーワールドカップ(W杯)カタール大会アジア2次予選の北朝鮮―韓国戦が行われる。韓国のサッカー男子代表の平壌遠征は1990年⑩月の親善試合以来、29年ぶりとなる。
しかし、サッカー韓国代表戦の名物とも言える熱狂的な応援団「レッド・デビル」の北朝鮮訪問は認められず、韓国へのテレビ中継も行われない。
大韓サッカー協会はアジアサッカー連盟(AFC)を通じて、記者団と応援団の派遣、テレビ中継を認めるよう要請した。しかし、北朝鮮側からの回答は、選手団を除く人員の入国許可はサッカー協会が決められないとのものだった。韓国政府も北朝鮮側に応援団やテレビ中継などを打診したが、北朝鮮は最後までこれを「黙殺」したもようだ。
2月下旬のベトナム・ハノイでの米朝首脳会談が決裂して以降、北朝鮮は韓国の文在寅政権を突き放しており、W杯予選までもがそのあおりを食った形だ。民間交流案件までがこのように扱われるのだから、北朝鮮の「韓国はずし」は実に徹底している。
側近であるチョ・グク法相の辞任で窮地に追いやられた文在寅政権は、看板政策である南北対話がこの有様であることに、いっそう危機感を深めているはずだ。
先日の米朝実務協議で北朝鮮の非核化に向けた進展があれば、米国の了解の下に北朝鮮がのぞむ南北経済協力に踏み出し、現状を打開したいとの思いが文在寅政権にはあった。それがかなわなかった以上、文在寅政権が能動的に動ける機会はしばらく訪れそうにない。
ただ北朝鮮は、文在寅政権を非難しながらも、その政敵である野党・自由韓国党にも激しい攻撃を浴びせている。北朝鮮としては、保守派の自由韓国党が政権を取るよりも、文在寅氏と与党・共に民主党に政権を維持させておく方が、「やりやすい状況」であるのは間違いない。
それでもなお文在寅政権に対する非難が続くならば、これはもう、金正恩党委員長が何らかの理由から、同政権の終焉を願っているとしか思えない。果たして金正恩氏は、文在寅氏に救いの手を差し伸べるのか。あるいはいっそう冷たく突き放すことで、「トドメ」をさそうとするのだろうか。
(参考記事:韓国は「自滅の道を歩むだろう」…北朝鮮がシビアに予言)