金正恩氏「女性への性的虐待やめよ」国連勧告を拒否

国連人権理事会の第42回定期会合(スイス・ジュネーブ)で20日、北朝鮮の人権状況に対する普遍的定期審査(UPR)報告書が採択された。同報告書には、北朝鮮の人権状況を改善するための262の勧告が盛り込まれている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、北朝鮮は事前に提出した同報告書に対する答弁書で、南北離散家族問題解決のため韓国と協力すべきなどとする132の勧告については受容している。

女性芸能人を処刑場に

その一方、国際労働機関(ILO)への登録など56の勧告については留意するにとどめ、国際刑事裁判所(ICC)と関連するものや、性的暴行・人身売買・家庭内暴力など女性に対する暴力に関わるものなど11の勧告については拒否する意思を表明している。残る数十の勧告に対する態度は詳らかでない。

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米朝対話のラインが紆余曲折を経ながらも保たれ、トランプ米大統領が金正恩党委員長との「良好な関係」をアピールする現在、なんだか遠い昔のことのように思われるが、北朝鮮は少し前まで、米国をはじめとする国際社会から激しい人権攻勢を受けていた。そして、金正恩氏はそのことを最も苦々しく思っていた。人権こそは、恐怖政治で維持されている金正恩体制の根幹を揺さぶりかねないものだからだ。

核実験や弾道ミサル実験の連発で国際世論の目を引きつけ、人権攻勢の波を弱めた一点だけをもってしても、金正恩氏の「核戦略」は大成功だと言えるかもしれない。

それにしても、北朝鮮が百数十の勧告は受容しながら、女性に対する暴力に関する勧告を頑として拒否しているのは、金正恩氏が人権攻勢のどの部分を最も嫌っているかを如実に見せているように思える。

金正恩氏は、米国との非核化交渉を自国に有利な形で乗り切った後は、世界でも有力な国家指導者として国際社会に地位を占めたいのだ。確かに、あの若さである。大国を向こうに回した外交戦で勝利し、20~30年も国家指導者として君臨し続ければ、それも夢ではないかもしれない。

しかし国際社会は、女性への暴力の横行を許すような国家の指導者には、そのような地位を決して認めないだろう。

金正恩氏はそのことを良く分かっているから、国内で女性への暴力が横行する現実そのものを認めないのだろう。だが百歩譲って、仮に北朝鮮国内の現実が変わるなら、国際社会に対して現状を認めなくても構わない。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

金正恩政権は、女性官僚の活躍が目立っているのが最大の特徴のひとつだ。金正恩氏が祖父や父親と比べてマシな女性観を持っているなら、それはそれで結構なことだ。

しかし北朝鮮社会の現実を考えると、状況の改善は生易しい課題ではない。公開処刑を女性芸能人たちに「強制見学」させるような金正恩氏の人権感覚に、大きな期待は持てないというのが正直なところだ。

(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー