自らの「すぐバレる嘘」で危機を引き寄せた文在寅政権
北朝鮮の小型木造船の領海進入を韓国軍などが捕捉できなかった問題で、韓国政府や軍当局のウソが次々と明らかになっている。
韓国当局は当初、漂流していた小型船を海上で発見したかのように説明していた。小型船は軍・警察の警戒網に捕捉されることなく、南北の境界線から約150キロも南下していたから、この時点でも大いに問題視された。沿岸部には軍民の重要インフラが並んでおり、韓国国民が「わが軍は大丈夫か」と不安がるのも道理だった。
(参考記事:韓国専門家「わが国海軍は日本にかないません」…そして北朝鮮は)しかしその後、小型船が15日に東海岸の三陟(サムチョク)港に自力で入っていたことが明らかになり、政府非難の世論は沸騰する。
そして24日、中央日報(日本語版)は、小型船が三陟港に入った当日の午前、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相らが出席した対策会議が合同参謀本部地下バンカーで開かれたと暴露した。この会議では、小型船が三陟港に接岸し、現地住民が通報したという海洋警察の状況報告が共有されていたという。
つまり、韓国政府と軍当局は、報告の混乱により発見時の状況を間違えて発表したのではなく、軍・警察の失態を把握していながら、あえて嘘をつき、事実の隠ぺいをはかっていたということだ。事実ならば、文在寅政権にとって大きな打撃になるだろう。
韓国では、国内政治の葛藤や腐敗のために、軍事行政が犠牲になるということが繰り返されてきた。
(参考記事:日韓「レーダー照射問題」の背後にある韓国政治の闇)それにしても不思議なのは、このようにすぐにバレる嘘を、どうして平気でつくのかということだ。
実際のところ、韓国軍が小さな木造船を発見できなかったこと自体は、改善の必要があるにせよまったく理解できないことでもない。日本にだって、海上の警戒をすり抜けて、北朝鮮の木造船が少なからず漂着している。中には、乗組員が上陸していたケースもあった。
だから今回の韓国軍の失態も、合理的な改善策を打ち出していけば批判はすぐに沙汰止みになった可能性が高い。
ところが、文在寅政権はこの事態によるダメージを、自らの「すぐバレる嘘」で倍加してしまったのだ。事実の隠ぺいを図った理由は様々あるのかもしれないが、政権の支持率が気になったというのが最大のものではないか。
南北対話に賭けてきた文在寅政権は、北朝鮮に突き放されて窮地に陥っている。
(参考記事:日米の「韓国パッシング」は予想どおりの展開)こうなったら、厳しい非核化要求へと舵を切るのもひとつの選択肢だろうが、彼らがそうしようとはしないのは、「今までの努力」に恋々としているからではないのか。
(参考記事:「韓国は欲張り過ぎだ」米国から対北朝鮮で厳しい声)