「やり手の女性社長」を裸同然で放り出した金正恩政権の謎の動き
50代女性のキムさんは、2000年代後半から平壌市内の大同江ビール工場からビールを仕入れ、郊外にある平城(ピョンソン)や順川(スンチョン)の市場やレストランに配送するビジネスをしてきた。
金正日総書記の指示に基づき、廃業した英国のビール工場から設備を買い入れ、立ち上げられたのが大同江ビール工場だ。2002年4月から生産を開始、主に平壌市内で販売し、味の良さで非常に高い評価を得てきた。
工場は、運営予算と従業員への給料、配給を確保するために販路拡大を迫られた。キムさんは権力機関とのコネを利用して、工場に保証金を預けた上でビールを仕入れる権利を得た。
キムさんは、人民委員会(市役所)から出張証明書を得て、全国有数の卸売市場のある平城や順川を行き来し、証明書がない場合には検問所でワイロを掴ませ通過していた。手腕を発揮して販路をどんどん広げ、平壌や周辺地域では名の知れた商売人となっていた。
事件が起きたのは、今年1月末のことだった。