「下剤を飲ませ水を一滴も与えない拷問」で政敵抹殺…北朝鮮の権力闘争

彼らは勢力を増す張成沢氏をけん制したが、同氏の反撃の方が素早く強力だった。張成沢氏が率いる党行政部は、人民保安部(警察庁=現人民保安省)と最高検察所の監督機関だ。政敵の不正の証拠をつかむのは容易い。張成沢氏により告発された禹東則氏は自殺に追い込まれ、李英鎬氏は逮捕された。

張成沢氏が除去した政敵はほかにもいる。韓国の李明博元大統領の回顧録には、次のような記述がある。

「2011年初め、アメリカと中国から驚くべき話を聞かされた。我々と接触した北朝鮮の高官が公開処刑されたというものだった」

この高官の名は、柳敬(リュ・ギョン)という。かつて小泉訪朝を巡り日本側と水面下で接触し、「ミスターX」としても知られた。柳敬氏は体制への忠誠心が厚く、金正日総書記から絶大な信頼を得ていたとされる。それでも、些細な報告漏れを張成沢氏に突かれ、罠にかけられ家族もろとも銃殺されたと言われる。

(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認