金正恩氏が「寄生虫動画」の兵士亡命事件で沈黙を守る理由

仮に、元兵士が殺人などの重大犯罪に関わっていた場合には「非政治的犯罪者」と見なされ、脱北者の保護と定着支援に関する法による支援対象から外すことができると定められている。そうなると、元兵士の救命に全力を尽くしてきたこれまでの経緯から言って、韓国政府は彼の取り扱いに困ることにもなりかねない。

しかし現状では、東亜日報の報道は間違いである可能性が高いと筆者は考えている。何故なら、元兵士が殺人などの重大犯罪に関与していたならば、北朝鮮メディアが黙っているはずはないからだ。きっと、「稀代の殺人者」とか「薄汚いゴロツキ」などの言葉を使い、口をきわめて罵倒しているはずである。無実の人に対してもこうした非難を行う北朝鮮が、本物の犯罪者に対して遠慮するワケがない。

もっとも、元兵士の亡命があまりにも衝撃的だったために、言及することすら極力避けたいと考えている可能性もないではない。とくに、手術場面の「寄生虫動画」が国内に流入して拡散するようなことになれば、国民の間に体制への強い反発が芽生える可能性もある。

(参考記事:北朝鮮の亡命兵士の腸が寄生虫だらけになった理由