【対北情報戦の内幕-10-】朝鮮総連を震撼させた公安当局の「セセデ」獲得工作

「犯罪という『出来事』を捜査する警察と、対象組織が何を考えているかという『傾向』を調べる公安庁とでは、活動の目的が異なる。例えば、うちにも研修所はあるが、教えているのは法律や理論が主であり、警察のように尾行や工作の訓練は行わない。

ただ、警察官が工作を行うようになるのは、早くても30代半ばからでしょう。うちは20代前半から実戦に投入する。確かに若手の失敗は多いが、それはそれだけ多くの実戦を経験しているということ。弾幕をかい潜れば、かすり傷のひとつやふたつは当たり前でしょう。

うちは組織内部から『深層情報』を取ることにかけては、警察に負けていない。盲腸官庁と揶揄されながらも、決して廃止されない理由はそこにあると思っている」

しかし果たして、組織の一部分を知るだけの協力者を運用しながら、極秘扱いの情報をどれほど取れるものなか。次回は公安庁が自らの存在理由を維持するため、「禁じ手」とも言える手法を用いているとの疑惑に迫る。(つづく)

(取材・文/ジャーナリスト 三城隆)

【連載】対北情報戦の内幕/外務省編・外事警察編