「私の故郷に人道支援をしないで欲しい」ある脱北者の血のにじむ手記

現地では、いまも数万人の人々が住む家もないままさまよっている。そんな人々を、キム氏はもちろん案じている。しかし、彼が手記を寄せたのは、私たちに同情を請うためではなく、次のように訴えたかったからだ。

「従来のようなやり方なら、国際社会は北朝鮮に人道支援を行うべきではない」

北朝鮮の元官僚であるキム氏は、過去の国際支援がどのようにして軍隊に奪われ、さらには横流しが繰り返されたかを、自らの体験をもって告発している。

(参考記事:北朝鮮への人道支援が「毒」とならないために…ある脱北者の手記

繰り返される大量死

言うまでもなく、故郷の人々を案じつつ筆をとった、涙と血のにじむ告発である。被災者の手に渡っているかどうかも監視できない状況で、ただ物資だけを北朝鮮に運び込めば、金正恩党委員長の「成果」として宣伝され、体制の延命に利用されかねない――というのが、彼の言わんとするところだ。