飢える一般国民をしり目に…金正恩「赤い貴族」の醜悪な内紛
国家保衛省の指示を受けた区域の保衛部は、このいとこの家で家宅捜索を行なったが、時計の発見には至らなかった。しかし、追及を続けた結果、ようやく「自分が盗んだ」との自白を引き出すに至った。(参考記事:女性少尉に「性上納」を強い続けた、金正恩「赤い貴族」の非道ぶり)
時計が隠されていたのは、金日成氏の肖像画の裏だ。いくら保衛部とは言え、肖像画には手を出さないだろうとの考えから、裏にテープで貼り付けていたのだという。
時計を盗んだ動機についていとこは、恨みから宗孫を貶めるためだと述べた。
「同じ李乙雪の子孫の自分は、国から何一つ恩恵を受けていないのに、宗孫は贈り物を受け継ぎ、党の手厚い保護を受け、鼻高々の様子が気に入らなかった」
「暮らしが楽ではなく、何度か無心したが、助けの手を差し伸べてくれるどころか相手にすらしてくれず、怒りのあまり犯行を罪を犯した」(いとこの供述より)
この人物と李乙雪氏との関係性は不明だが、かつては何不自由なく暮らせた赤い貴族の中にも、生活に困る者が出始めていると伝えられている。(参考記事:時代に乗り遅れ貧困化し始めた北朝鮮の「赤い貴族」)
いとこには労働鍛錬刑(懲役)1年の刑が下され、時計は宗孫の手元に戻った。
事件のことは、中央党(朝鮮労働党中央委員会)の通報資料(学習資料)にも掲載されたが、金氏一家の権威の毀損につながることもあり、被害者の名前は記載されなかった。しかし、幹部の間ではあっという間に噂が広がってしまった。