子どもの数が10年で半分に…深刻なレベルに達した北朝鮮の少子化
児童の数が減れば、教育水準を維持するために、学校の統廃合の話も出てきそうなものだが、当局は非常に消極的だ。人口減少は都市部より農村や島しょ部の方が深刻であるため、もし統廃合に踏み切れば、遠すぎて学校に通えない児童が続出することが目に見えているからだ。諸外国ならスクールバスの運行を検討しそうだが、ガソリン不足の深刻な北朝鮮では考えもつかないのだ。
情報筋が伝えてきたのは農村部の話だが、許可なく引っ越しができないという法を破って、相対的に豊かな都市部に逃げる人が少なくないことも、人口減少に関連していると思われる。
その穴埋めに、都市在住の若い男性を農村や炭鉱に送り込み、女性と結婚させて定住させ、子どもを産ませるという政策が進められている。しかし、あまりに劣悪な環境に耐えきれず、逃げ帰る人が少なくないため、当局が期待するような効果は上がっていないようだ。
(参考記事:北朝鮮「陸の孤島」で繰り広げられる“女性確保”の不可能な作戦)北朝鮮が取り得る少子化対策としては、国営企業の給与水準の現実化、育児支援、教育支援、税金外の負担禁止の徹底などが考えられるが、それを支えるだけの財政的裏付けがないため、思想教育と強権的な行政措置しかできることはないようだ。
そればかりか、市場で儲けて経済的な余裕がある女性が、ベビーシッターを雇って育児を任せることについても、「腐り切った資本主義の古ぼけた思想残滓の余毒」などと批判する始末だ。こんな非現実的であべこべなメッセージが出される状況で、積極的に出産・育児をしようとする女性は、なかなか現れないだろう。
(参考記事:「腐り切った思想の毒」金正恩命令に北朝鮮の母親たちが反発)