エアコンもスポドリもない北朝鮮、“熱中症と隣り合わせの地獄の闘い”に動員される女性兵士たち

北朝鮮全土で記録的な猛暑が続くなか、建設現場や農村に動員された女性兵士や住民が熱中症により次々と倒れ、死亡する事故が相次いでいる。エアコンやスポーツドリンクといった最低限の暑さ対策もない過酷な環境の中、当局は建設期限を優先し、強制労働を中断しようとしない。韓国のサンド研究所が運営するサンドタイムズが報じた。

平安南道平城市の情報筋によると、今月初旬、軍人の家族が差し入れを携えて地方の工業工場建設現場を訪れた際、一緒に作業していた女性兵士が突然スコップ作業中に倒れ、そのまま死亡したという。

家族は、「こんなふうに死ぬなんて。これから軍に行く息子がいるというのに」と涙ながらに語ったという。

現在北朝鮮では、「社会主義大建設突撃戦」と呼ばれる国家的プロジェクトの名のもと、女性兵士や主婦までもが建設労働に駆り出されている。早朝から日没まで、炎天下にさらされながらの作業が続くが、日陰も休憩所も提供されていないのが実態だ。

情報筋は「直射日光の下で働き続け、倒れる事故が頻発している。とくに女性兵士は劣悪な作業環境に無防備なまま放置されている」と警鐘を鳴らした。

政府は高温警報が出ていても作業の中断を認めず、死亡事故が発生しても関連報道は徹底して統制しているという。

農村でも状況は深刻だ。10日には黄海南道と黄海北道の農場で、50代男性と60代女性が猛暑の中、雑草取り(キムメギ)作業中に倒れ死亡した。気温は35度を超えていた。

(参考記事:「農作業か、死か」──北朝鮮農村で猛暑による熱中症死が多発、無視される作業中止命令

現地では本来、正午から午後3時までは屋外作業を控える決まりがあるが、住民は生活費を稼ぐために個人農地の手入れを続けており、事故に至った。

別の事故も発生している。咸鏡北道吉州郡では、50代男性が帽子もかぶらずに4時間以上、直射日光下で作業し、急性熱中症で死亡。所属していた作業班は「キムメギ(田畑の草取り)戦闘」と称された動員で、他の作業者もめまいを訴えていたが、割り当てられた作業量をこなすために休憩は許されなかった。

軍農業経営委員会は「これは個人の健康問題ではなく、組織的な怠慢による人災の可能性が高い」とし、関係者への処分も視野に調査を進めている。

しかし、現場では依然として「精神力で耐えろ」「政治的覚悟で乗り切れ」との指導が繰り返され、適切な保護措置は取られていない。栄養状態が悪く、体力が落ちている住民や女性兵士にとっては、まさに命がけの労働となっている。

北朝鮮では30度台半ばの高温多湿の気候が続いており、気候変動の影響でこうした猛暑が今後も常態化すると見られている。それにもかかわらず、政府は熱中症による死亡事故について一切公式に認めておらず、根本的な対策も講じていない。

このような状況下で、女性兵士や住民たちは「命を削って国家に尽くす」ことを強いられている。北朝鮮の猛暑被害は単なる自然災害ではなく、明らかな構造的人災とも言えるだろう。