「金正恩の米屋」にも在庫なし…北朝鮮で餓死者続出

韓国統一省の具炳杉(ク・ビョンサム)報道官は20日の定例会見で、「(北朝鮮の)一部の地域で餓死者が続出するなど、食糧難が深刻だと見ている」と述べた。

北朝鮮の食糧事情を巡ってはこのところ、韓国からこうした情報の発信が続いている。

まずは6日、聯合ニュースが「北朝鮮の中では生活水準が比較的高いとされてきた南部の開城市で、餓死する人が続出しているようだ」と報じた。北朝鮮情報筋の話として伝えたものだが、出所は情報機関である国家情報院(国情院)と見てまず間違いない。

15日には、権寧世(クォン・ヨンセ)統一相が国会外交統一委員会で「餓死者が続出するほどではないとみている」と答弁したものの、具報道官はこれを修正した。権氏が言ったのは「(1990年代後半に多くの餓死者が出た)『苦難の行軍』の時期ほど大規模な餓死者が発生する状況ではないという趣旨だ」としたのだ。
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さらに聯合ニュースは21日、統一省当局者の話として、北朝鮮で餓死者が続出している要因について次のように報じた。

「第一に前年比で生産量が減少した。第二に北の当局で食糧供給と流通に対する政策を変える動きが見られ、流通問題の可能性がある」

食糧供給と流通の政策変化とは、穀物の販売を国営の「糧穀販売所」に独占させ、市場での販売を禁じたことを言う。表向きは米価の安定を図るのが目的とされているが、国民の食料調達を国家が支配することで、不平不満を抑えることにつながっていたかつての配給制を復活させたいものと見られる。

ところが農民たちは、この政策に非協力的だとされる。糧穀販売所の買取価格が、市場よりも安く設定されているためだ。一方、当局は市場での穀物の売買を取り締まっている。そのため、ただでさえ不作のせいで少ない食糧が、販売所にも市場にも出てこない事態になっているのだ。

金正恩総書記は政権を継承してから数年間は、市場を放任する政策を取り、その点では国民から支持されていた。ところが最近は、市場への統制を強め、経済の主導権を国家の手に取り戻すことを狙っているようだ。

その理由はいくつか考えられるが、とにかく方向性もタイミングも悪い。金正恩氏の失政が、「苦難の行軍」の再現につながらないとも限らないのだ。