「震えて死にゆく患者たち」北朝鮮 “絶望病棟” の凄惨な実態

いまもって、公式に国内での新型コロナウイルスの感染者が一人もいないとしている国が、全世界に2つある。「豊かな北朝鮮」と揶揄される独裁国家のトルクメニスタンと、本家本元の北朝鮮だ。

両国からはコロナと思しき症状で死亡した事例についての断片的な情報が伝わってくるが、確認は事実上不可能だ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、北朝鮮のコロナ関連の最新状況を報じた。

平安北道(ピョンアンブクト)文徳の情報筋によると、発熱と咳があって病院に行っても、結核やインフルエンザ、栄養失調という診断を下し、コロナ感染の所見を示すことはない。

肺疾患で亡くなる人もおり、この情報筋が住む町内でも、3人が結核で死亡。冬の到来と共に、インフルエンザで亡くなる人も続出しているとのことだ。しかし、本当の死因がコロナなのか、他の病気によるものかは報告・統計を把握している中央の幹部や、患者を実際に診た医師以外にはわからないという。

北朝鮮で結核や栄養失調は決して珍しい病気ではなく、他の感染症も少なくない。また、北朝鮮の医療事情では、PCR検査を行うだけの設備、試薬が完備されているとは考えにくい。コロナを意図的に隠蔽しなくとも、闇に隠れてしまうのだ。
(参考記事:全世界はコロナで苦しみ、北朝鮮はチフスで苦しむ

ただ、明らかに怪しい事例も中には含まれている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、清津(チョンジン)市の青岩(チョンアム)区域でわずか数日の間に、10名あまりの結核患者が、相次いで亡くなったと伝えた。彼らはインフルエンザとの診断も受け、死因については栄養失調による健康悪化、インフルエンザによる肺炎などと様々な説明がされているとのことだが、コロナのコの字も出ていないという。

また、患者らは区域内のクムバウィ洞にある第2予防院(結核病棟)に収容されたが、まともな治療も受けられず、暖房がなく寒さに震え、半ば放置された状態で亡くなったとのことだ。コロナでも、そうでなくても、施設の劣悪さに耐えかねて亡くなっていくのだ。
(参考記事:若い女医の死で幕を閉じた北朝鮮「恐怖病棟」での出来事

また、病院は遺体を、遺族に何の説明もないまま、近隣の山に埋葬してしまった。遺族は「病院が家族が死に至った状況すら説明してくれない」と訴えているという。

通常、コロナの疑いで亡くなった場合は、遺体を火葬することになっているが、それすら行われず、遺族に知らせないままに土葬にしてしまったことからは、何かを隠したいという意図が読み取れる。
(参考記事:高熱の死者をそのまま火葬…「新型コロナか」北朝鮮で疑念広がる