「お前が言うな」北朝鮮女性が金与正の”コワモテ発言”に反発

1998年3月15日、韓国・ソウルの梨花女子大学前に、30数人の女性が集まった。彼女らは火のついたタバコを手に、喫煙しながら40分間に渡ってデモを行った。女性の喫煙権保証を求める「喫煙デモ」だった。

人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真

当時の韓国では、高齢者を除く女性の喫煙は社会的にタブーとされており、女性はトイレなどで隠れてタバコを吸うことを強いられた。男性から暴言を浴びたり、暴力を振るわれたりすることすらあった。喫煙のタブー視は、女性に対する抑圧の象徴だったのだ。

当時の韓国の新聞を見ると、「マンスプレイニング」な記事が見受けられる。「女性は物を知らないであろう」との差別意識から、女性に喫煙の有害性を説くといったものだ。当時の韓国人男性の喫煙率が、6割を超えていたことは棚に上げてである。

人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真

今の韓国には、「女はタバコを吸うな」など公言した日には厳しく批判される雰囲気がある。一方、北朝鮮では今でも若い女性の喫煙は不道徳な行為とされている。そして最近、金正恩党委員長の妹・金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が、女性の喫煙に対する規制に乗り出したと、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

今年、脱北者団体の対北ビラ散布問題を巡り、韓国への強硬姿勢で名を売った金与正氏が、国内でも「コワモテ」ぶりを発揮し始めたようだ。

(参考記事:【写真】水着美女の「悩殺写真」も…金正恩氏を悩ませた対北ビラの効き目

人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真

ところが、当の北朝鮮女性からは反発の声が上がっている。北朝鮮では金正恩氏こそが、最も不道徳な喫煙者であるためだ。

北朝鮮では10年ほど前まで、喫煙や飲酒をする女性はほとんどいなかったとされる。それが、最近になって増加傾向にある。4月15日の太陽節(金日成主席の生誕記念日)や、2月16日の光明星節(金正日総書記の生誕記念日)を祝う贈り物として、女性同士でタバコを贈り合う現象も起きているという。

そんな実態が、中央党(朝鮮労働党中央委員会)にまで伝わった。これに対して金与正氏は、「女性たちのこのような行為が全社会に蔓延している」として、「朝鮮女性の高尚な品性をボロ靴のように投げ捨てて、資本主義生活文化に傾く行動を徹底して排撃すべき」と指摘したという。

さらに、「北朝鮮式社会主義生活文化と様式を守り、発展させるための事業を必須のものとして行うべき」として、女性に対するたゆまなき思想教養、思想統制、取り締まりを強化すべきと指示した。また、「その事業を女盟(朝鮮社会主義女性同盟)が中心になって取り組み、党組織の指導のもとにすぐに思想闘争会議を開き、問題のある女性を思想闘争舞台にあげて集中的に批判し、思想的に鍛えるべき」だとも強調した。

女性の喫煙は、社会主義朝鮮の伝統にそぐわない不道徳な資本主義的生活様式で、おおっぴらに喫煙する女性がいれば、吊し上げにして、コテンパンに批判し、大恥をかかせよということだ。

これに、女性たちは反発している。

儒教由来の伝統的な価値観でタブーとされている、年配者の前での喫煙を平気でする金正恩氏は問題にならないのに、なぜ隠れて喫煙している女性だけ責められるのかというものだ。金正恩氏はヘビースモーカーとして知られ、所構わず喫煙している様子が、国営メディアから配信された画像、動画にも数多く捉えられている。その妹である金与正氏が「道徳」を云々していることに対しって、「お前が言うな、という反発が起きている」(情報筋)というわけだ。

(参考記事:北朝鮮の「禁煙政策」金正恩氏がぶち壊しに

さらには、こんな反発も出ている。

「家族を食べさせるだけではなく、国の建設工事もすべて女性が行っている。もはや母系社会になって久しいのに、なぜ未だに女性に対して高尚な品性を要求するのか」
「男性はタバコを吸って酒を飲んで騒いでも放置するのに、女性だけあげつらうのは不当だ」(情報筋)

北朝鮮では、市場経済化の進展と共に、女性の地位に大きな変化が生じた。男性は、国から割り当てられた職場に出勤しなければならず自由に商売できないが、女性はそのような縛りから比較的自由であるため、1日中市場で商っていられる。経済的な主導権を握った女性の立場が強くなったのが今の北朝鮮において、国家が押し付けてくる「高尚な品性を持った女性像」など、古臭くカビの生えたものに違いない。

(参考記事:「男たちは役立たず」財布のヒモを握った北朝鮮女性たちの逆襲

北朝鮮建国前の1946年、北朝鮮臨時人民委員会は、女性の選挙権、被選挙権の保障、強制結婚の反対、離婚の自由、養育費訴訟権の認定、一夫多妻制の否定などを謳った「朝鮮男女平等権法についての法令」を発表し、女性をジェンダーロールから解放するための様々な施策を施行、女性政策が進んでいると言われていた。

その一方で、喫煙、飲酒のみならず、「はしたない」などと言った理由で、女性が自転車に乗ることや、ズボンを履くことを禁止していた。

(参考記事:北朝鮮の女性が勝ち取った「自転車に乗る権利」