金正恩「過激アンダーウェア」の秘密と失踪外交官の行方

2年前に姿を消し、米国などへの亡命の道を探っていると伝えられていた北朝鮮のチョ・ソンギル駐イタリア大使代理(当時)が昨年7月、妻と共に第三国を経由して韓国に入国していたことがわかった。

韓国の聯合ニュースが与野党および複数の情報関係者の話として伝えたところでは、チョ氏は現在、韓国当局の保護下にある。これまで韓国入りの情報が伏せられていたのは、北朝鮮に残る家族の身を案じた本人の求めに応じたものだという。

隠微な生活実態

一方、韓国の主要メディアはこのニュースを伝えながら、チョ氏の韓国入りが南北関係に影響する可能性を指摘した。金正恩党委員長が最高指導者となって以降、北朝鮮の大使級の高官が韓国に亡命したのはチョ氏が初めてとされる。北朝鮮が、亡命(脱北)した人々を裏切り者として激しく指弾してきたことを踏まえれば、この件が金正恩氏にとって、きわめて不愉快な出来事であろうことは塑像に難くない。

また、チョ氏がイタリアで、金正恩ファミリーのために特別な役割を担っていた可能性があることも、北朝鮮を刺激する要素となるかもしれない。

先に韓国へ亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使(現在は韓国国会議員)は当時、イタリアが北朝鮮指導層のぜいたく品を密輸するルートの中のひとつだったと指摘し、「2006年から2009年までイタリアで3年間研修を経たチョ・ソンギル氏は、密輸ルートに関わっていた可能性が大きい」と話していた。

また、イタリアの港湾都市であるトリエステにはかつて、北朝鮮系の海運会社があり、そこの代表がローマの大使館と連携しながら、ぜいたく品購入のオペレーションに当たっていたとの情報もある。近年は経済制裁により海運会社の活動はできないはずだから、大使館の役割は一層重要になっていたはずだ。

経済制裁がいかに厳しくとも、金正恩氏は欲しいものをことごとく入手してきた。米シンクタンクのC4ADSが2019年7月に発表した、国連安全保障理事会の制裁決議で禁止されている北朝鮮によるぜいたく品調達についての報告書によれば、北朝鮮は2015年から2017年にかけて、レクサスを含む日本車256台を輸入していたという。北朝鮮メディアは最近、金正恩氏がレクサスの運転席に座る様子を公開したばかりだ。

一方、英紙デイリー・メールは2017年4月、金正恩氏が「喜び組」のために、多額の金を費やして「セクシーアンダーウェア」を輸入していると報じたことがある。

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言うまでもなく、こうしたぜいたく品の調達は、北朝鮮でも最高機密となっている。チョ氏がこうした物資の調達に当たっていたとしたら、制裁を潜り抜ける手法や密輸ルートだけでなく、金正恩氏をはじめとする北朝鮮権力層の隠微な生活実態が諸外国に把握されている可能性もある。

チョ氏の韓国入りに対し、北朝鮮がどのような反応を示すか見ものである。