金正恩政権が推進「強制結婚」政策に北朝鮮の若者が反発

北朝鮮の朝鮮人民軍は、今年から兵役の期間を1〜2年短縮。繰り上げ除隊させた兵士たちを出身地に戻さず、「集団配置」と称して農村や炭鉱に送り込む計画を実行に移している。

金正恩総書記が打ち出した「国家経済発展5カ年計画」の達成には労働力が欠かせないが、それが大幅に不足しているのだ。具体的にどれほど不足しているのかは不明だが、農村、炭鉱地域の人口減少はかなり深刻なようだ。
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スキあらば配属先から逃げ出そうとする彼らを定着させるため、当局はある手法を思いついた。地元の女性との強制結婚だ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、25日の先軍節を迎え、今年の春に農村や炭鉱に集団配置された除隊兵士が定住するようにせよとの中央の指示に基づき、朝鮮労働党咸鏡北道委員会が21日、実行案を作成した。

咸鏡北道の党委員会は、農村、炭鉱に人員を派遣し、生活上の問題はないか聞き取り調査を行っているが、その過程で結婚の話を持ち出すというものだ。今のところ、まだ中央からのゴーサインを得ていないが、準備を進めている。

この話が除隊兵士らに伝わるや、反発の声が上がっている。

党委員会は、年頃の地元女性を除隊兵士とカップルにさせて合同結婚式を挙げようとしている。しかし、当人たちは非常に嫌がっているという。

都会出身の除隊兵士は、なんとかして元いた都会に戻ろうとしているが、農村戸籍を持つ地元女性と結婚することになれば、自分の戸籍も農村戸籍になってしまう。そうなれば、抜け出すことは困難になる。北朝鮮における都会と農村、炭鉱の圧倒的な経済格差を考えると、そのまま定住することは、一生貧困から抜け出せないことを意味する。

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好きでもない女性と結婚させられ、極貧の地域に死ぬまで縛り付けられ、子どもにもそんな運命を背負わせることになるのだ。元々農村や炭鉱に住んでいた人たちはそれを嫌い、様々な手段を動員して次々に地元を去っている。深刻な労働力不足は、このためと思われる。
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除隊兵士らは、「故郷に両親の決めた婚約者がいる」「軍隊時代の休暇時に出会い、一生を約束した女性がいる」などと嘘をついて、強制結婚からなんとか逃れようとしている。

一方の女性の反応について、情報筋は触れていないが、国の都合で勝手に結婚させられるかもしれず、不安や反発を感じていることだろう。当局は、勤務中の事故などで障がいを負った栄誉軍人(傷痍軍人)と、女性を半ば強制的に結婚させるという政策を行ったが、夫を捨てて家を出ていくケースが多いとのことだ。
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農村や炭鉱に送り込まれているのは除隊兵士たちだけではない。都会の若者で、運悪く選ばれた人々も「嘆願」、つまり自ら志願したという形を取って、これら地域に送り込んでいるが、様々なトラブルが起きている。

イメージが悪く、現金収入を得るチャンスが少ない農村や炭鉱を出て、都会に向かうのはごく自然な流れだ。それを引き止めるには、これら地域の生活レベルの向上が欠かせないのだが、北朝鮮当局はそこには考えが及ばないようだ。
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