朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の女性兵士が、遺書を残して自殺を図り重態に陥る事件が発生した。軍内で蔓延する、性暴力の被害を受け続けた末の選択だった。 デイリーNK内部情報筋が伝えた事件のいきさつは、次のようなものだ。 事件の被害者は、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)に駐屯する朝鮮人民軍第7軍団の指揮部電信電話所交換分隊で、幹部席の交換手として勤務していた女性兵士のAさん。 黄海南道(ファンヘナムド)出身で、17歳のときに軍に入隊、第7軍団に配属されたが、その直後から性暴力 ...

「マルパンドン」とは「言葉の反動分子」という意味合いの北朝鮮の用語だが、反政府的な言動を指し、厳しく取り締まられている。 だからといって北朝鮮の人々は、何も言わずにおとなしく従っているわけではない。問題のなさそうな相手を選んだ上で、お上に対する文句をぶちまける。だが、運が悪ければ命取りになりかねない。 デイリーNKの内部情報筋が伝えたのは、北朝鮮最高の理系大学、金策(キムチェク)工業大学の秀才組が口を滑らせたことで招いた悲惨な末路についてだ。 事件の発端は先月初め。学内で親友 ...

昨年の「反動的思想・文化排撃法」の制定以降、北朝鮮では韓流ドラマ、映画などを見たというだけで重罪に処される事例が後を絶たない。先日は、韓国映画をたった5分見ただけの14歳の少年に、14年の労働教化刑(懲役刑)という極めて重い判決が下された。 コンテンツの流通に関わり、処刑されるケースもある。公開処刑の恐ろしさを、北朝鮮の人々は骨身にしみて知っている。 (参考記事:北朝鮮、14歳少年を「たった5分」で容赦なき見せしめ) だが、恣意的な法運用がなされている北朝鮮では、同じ罪を犯し ...

今月17日に行われた式典で見せた「老け顔」から、「健康悪化」説が再浮上している金正恩氏。本当に健康状態が悪いなら、体感マイナス20度という極寒の中での式典参加は、最高指導者として、なかなかタフなスピリットを持っていると言える。 健康状態に関する観測情報の真偽がどうであれ、金正恩氏は今年、ある事業でなかなか精力旺盛な姿も見せていた。今年春に着工した平壌の高級集合住宅「普通江(ポトンガン)川岸段々式住宅区」の建設プロジェクトがそれだ。 金正恩氏は3月、同プロジェクトの予定地を視察 ...

北朝鮮で、17日の公式行事に参加した金正恩総書記の「老け顔」が話題になっている中、韓国デイリーNKは同国のある地方の幹部に電話取材を行い、話を聞いた。行事の映像を見たという幹部は、「健康が本当に悪いようだ」などと感想を述べた。 (韓国と北朝鮮は、直接通話することはできないが、北朝鮮の一部地域で使える中国キャリアの携帯電話を経由するなどして、こうした取材を行っている。) 以下に、幹部とのインタビューを一部抜粋する。 編集部 元帥様(金正恩氏)は行事の間、ずっと厳粛な表情だった。 ...

北朝鮮では17日、金正日総書記が死去してから10年となったのに際し、金日成主席と金正日氏の遺体が安置されている錦繍山(クムスサン)太陽宮殿広場で「逝去10周忌中央追悼大会」が行われた。 ここに参加した、まだ30代の金正恩総書記の顔が、50代かと見まがうほどに老け込んで見えたことで、韓国メディアを中心に「健康不安」説が持ち上がっている。それを受け、日本の一部では「影武者」説が再燃しそうな雰囲気だ。 だが、現地の当日の気温は零下5~6度、体感温度は零下20度と伝えられている。本当 ...

韓国紙・東亜日報記者で、脱北者出身のチュ・ソンハ氏が自身のYouTubeチャンネルで、北朝鮮の金正恩総書記が、同国の高名な美容整形外科医2人を処刑させたとの脱北者証言を紹介している。 北朝鮮では、密かに流入する韓流ドラマなどの影響で、美容整形手術を行う人が増えていると言われていたが、金正恩氏はなぜ、医師らを銃殺させたのか。この出来事を巡っては平壌でも、ある種の「噂」が囁かれていたという。 チュ氏のYouTubeチャンネルに出演して証言を行ったのは、2019年11月に北朝鮮を脱 ...

朝鮮人民軍(北朝鮮軍)で最も許されない行為の一つが、私的組織の結成だ。たとえ小さなものであっても、「宗派行為」(分派行為=反政府活動)とみなされ、対象者は極刑に処される。 クーデターの芽を徹底して摘んでおくためだ。 (参考記事:「軍幹部はボディブローで崩れ落ちた」北朝鮮“クーデター未遂”の真相) 先月8日、朝鮮人民軍の保衛局(秘密警察、以前の保衛司令部)は、私的な組織とみなされる行為を行った兵士4人を逮捕した。 デイリーNK内部情報筋によると、中国国境にほど近い、平安北道(ピ ...

北朝鮮の人権問題を追及している民間団体が北朝鮮国内で公開処刑が行われた場所などを示したマップを作成し、15日に報告書を発表した。 韓国・ソウルに本部を置く「転換期正義ワーキンググループ(Transitional Justice Working Group=TJWG)」は、北朝鮮の政権が行っている人権侵害を記録することで、そのような行為をやめるよう警告すると同時に、将来的な加害者の法的処罰の可能性を高める目的で、このプロジェクトを進めてきた。報告書の発表は、2017年7月と20 ...

北朝鮮の金正恩総書記が実質的に権力を継承してから、17日で10年となった。大陸間弾道ミサイル(ICBM)など核戦力の実戦配備を成し遂げたうえに、史上初の米朝首脳会談も実現させ、祖父・金日成主席と父・金正日総書記に劣らぬ強固な独裁体制を築いた。 しかし金正恩氏には、先代までの最高指導者と比べ明らかに欠ける部分がある。実利主義だ。 金日成氏は中国とソ連・東欧の社会主義圏から、金正日氏は中国と韓国から、大規模な経済支援を引き出した。金正日時代には、日本からさえ食糧支援を引き出してい ...

「朝鮮の宝」とまでいわれ、北東アジアで最大規模の埋蔵量を持つ、北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)茂山(ムサン)郡に位置する鉄鉱山「茂山鉱山」。その利益で街は潤い、人々は北朝鮮国内のレベルとしては豊かな暮らしを営んでいた。 しかし、それも今は昔の話だ。 国連安全保障理事会の制裁決議で鉄鉱石を含めた鉱物資源の輸出が禁止されたことで、致命的なダメージを受けてしまった。その後も、細々と密輸が続けられてきたものの、昨年1月からのコロナ鎖国で、密輸も困難になってしまった。 鉱山の稼働が ...

WeChatとは、中国で広く使われているメッセンジャーアプリだ。外国との通信が事実上、禁止されている北朝鮮の人々が中国や韓国と連絡を取る場合、かつては音声通話が使われていたが、コストと保安面でメリットがあるとしてWeChatを使う人が増えた。北朝鮮当局は、このWeChatユーザーを、問答無用でスパイ扱いしている。 両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、今月初めに国家保衛省(秘密警察)が両江道保衛局(秘密警察)に対して、中国の携帯電話の使用者を最後の一人まで根絶やし ...

北朝鮮各地の協同農場では、国と軍が入れ代わり立ち代わりやってきて、国の農業計画(ノルマ)に基づき、コメやトウモロコシなどの収穫物を搾取していく。 それに対して農民は、少しでも多くの収穫物を手元に残そうと、くすねたり隠したりして必死の抵抗を示す。 特に軍は、栄養失調の兵士を数多く抱えていることもあり、食糧確保に必死だ。収穫物の争奪戦は国・軍と農民との間の、やるかやられるか、まさに生存を賭けた戦いの様相を呈していると言える。 さて、その経過はどうなっているか。 (参考記事:北朝鮮 ...

今年1月から今月8日までの時点で、中国キャリアの携帯電話を使った容疑で北朝鮮・両江道(リャンガンド)の保衛局(秘密警察)に逮捕された人が数百人に達することがデイリーNKの調べで明らかになった。そのほとんどが20代から40代の女性だ。 デイリーNKの内部情報筋が挙げた一例は、道内の金正淑(キムジョンスク)郡在住の30代女性、キムさんのケースだ。中国にいる知人と通話をしていたところ、電波探知機で探知され、郡の保衛局に逮捕された。 キムさんは7日間に渡って取り調べを受けた後で、両江 ...

北朝鮮の駅周辺には、「待機宿泊」と呼ばれる民泊が数多く存在する。停電などで運転見合わせや遅延が多発する中、列車を待つ間に食事や休憩、宿泊するための施設で、売買春の温床ともなっている。 このような宿泊施設が多数できた背景には、国営の宿泊施設の数が非常に限られている上に、公務で出張する人でなければ泊めてもらえないという事情があるが、売春が行われている点では待機宿泊と変わりない。 (参考記事:銭湯や民泊で…北朝鮮で「性売買」の低年齢化が深刻) 朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の30代軍官(将 ...

18人――これは、北朝鮮の北東部、人口約230万人の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の安全局(県警本部)の勾留場(留置場)で、今年の第4四半期に入ってから非公開処刑された人の数だ。 北朝鮮ではこれまで、公開処刑が頻繁に行われていた。残酷な光景を見せることで国民の恐怖を煽り、犯罪抑止に繋げようという意図から行われていたが、国際社会からの批判を気にしてか2015年ごろからあまり行われなくなっていた。それが2019年ごろから復活したが、最近になって再び、非公開で処刑が行われるようになり ...