水着美女の「衝撃写真」も…金正恩が神経質になる対北ビラの中身

北朝鮮側も韓国人タレントの写真を盗用して同様のビラを撒いたが、説得力の違いは歴然だろう。

そして最近、脱北者団体・自由北韓運動連合が北に向けて飛ばしたビラには、北朝鮮の一般国民が決して知ることのできない金一族の「秘密」が書かれている。ビラは、金正恩党委員長には異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏がおり、同氏は「浮気者の金正日」が既婚者であるソン・ヘリム氏と不倫関係となって生まれたと説明。金正恩氏の母で日本生まれの高ヨンヒと金正日氏も正式な夫婦ではなく「不倫関係」だったとしている。

そして、金正男氏が2017年2月、弟である金正恩氏が放った暗殺団により、マレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害されたことを暴露。その動機は、日本出身の母を持つ金正恩氏に対し、長男である金正男氏こそが本物の「白頭の血統」だったことにあるとしながら、「稀代の殺人鬼」である金正恩氏を「全民族の名にかけて必ずや処断する」と宣言している。

では、こうしたビラは北朝鮮国民に対し、どれほどの影響力を持つのか。ビラの多くは非武装地帯などの韓国側地域に落下してしまい、北朝鮮国民に届くように飛ばすのは簡単ではないとされる。

だが、「少数でも人々の目に触れるならば、与える効果は絶大だ」と韓国在住の脱北者男性が話す。

「情報が厳しく統制されている北朝鮮社会でも、今や海外の話題も含め、様々な噂話が口コミで広く拡散している。それでも、金一族に対するこうした情報はほとんど伝わっておらず、事実を知った時の衝撃は大きいのです。私は1980年代に、韓国と旧ソ連が首脳会談を行ったことを知らせるビラを見たことがあるのですが、ものすごくショックでした。『ソ連はわが方のはずなのに、なぜ!?』という感じです。韓国からは、ビラと同じような内容を短波放送でも飛ばしていますが、聞く機会を得るのは難しい。でもビラは一目で読むことができるし、回し見もできる」

脱北者団体は、ビラと一緒に同様のコンテンツを記録したSDカードやUSBメモリも飛ばしているが、北朝鮮当局は国内で使用される情報端末に、特別な認証を受けた記録媒体でなければ再生できなくする処置を施しているとも言われる。

しかし単なる紙のビラであれば、北朝鮮の人々の下に届きさえすればよいのだ。

このところIT技術レベルを上げ、海外からの心理戦に対して様々な自衛策を講じている北朝鮮だが、体制そのものが致命的なぜい弱性を抱えている限り、それを攻略する手段が絶えることはないのだ。