あなたの「つけまつげ」は北朝鮮の刑務所製品かもしれない

あなたが使っている「つけまつげ」。「メイド・イン・チャイナ」と書かれていても、もしかすると北朝鮮の刑務所で、囚人の手により作られたものかもしれない。

北朝鮮は、国際社会の制裁が強化される前からつけまつげやかつらの加工、輸出を行ってきた。その中の一部は、教化所(刑務所)で製造されているのだが、最近になって中国の業者からの発注が増え、ノルマが大幅に増やされたと、デイリーNK内部情報筋が伝えた。
(参考記事:北朝鮮製「つけまつげ」密輸のシビアな現場

ノルマが増やされたのは12月の初めのこと。平安南道(ピョンアンナムド)价川(ケチョン)市の1号教化所、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)市の3号教化所など、国内の一部の教化所では、つけまつげやかつらの製造以外にも、ニット、金属製品、家具、靴、その他衣類の製造も行っている。
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情報筋によると、1号教化所にはつけまつげ、かつら、ニット製品、中でもニット帽、セーターの注文が大量に入ってきた。3号教化所にはアクセサリー、ぬいぐるみの製造に必要な資材が山積みにされていたという。

これらの製品は、教化所だけで作られているわけではなく、一般労働者を雇った企業でも大々的に生産されていた。しかし昨年1月、新型コロナウイルスの流入防止のため国境が閉鎖されて以降、中国からの原材料の輸入と、中国への完成品の輸出ができなくなった。そのため多くの工場で従業員を大幅に減らすなどの措置を取ったが、結局は廃業せざるを得なくなった。これが、2021年9月頃のことだ。

それから数ヶ月で教化所への受注が急増した背景には、深刻な外貨不足のほかに、受刑者の人命軽視があると思われる。北朝鮮当局は、新型コロナウイルスは物に付着して流入しうると考えている。そのため、公民権が停止された、つまり人間扱いしておらず、死んでも構わないと思っている受刑者に輸入原料を扱わせるのなら問題ないだろうと考えている可能性があるのだ。

いずれの製品も、中国企業を通じて全世界に輸出される。奴隷労働で生産された製品に対するボイコットの声が全世界的に高まっているが、今のところ、中国製のつけまつげが実は北朝鮮の刑務所で作られたことを示す証拠は出てきていない。
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現在、社会安全省(警察庁)の教化局生産副局長が3人の随行員を連れて、1号と3号の教化所のどちらが生産実績が優れているかを現地で点検しており、来年1月8日に総和(総括、評価)を行う予定だという。この結果は、受刑者の悔悛の状況にも反映されるとのことだ。