「親が子供にアヘンを与え…」モノ不足に苦しむ北朝鮮の末期症状

昨年1月からコロナ対策として国境を封鎖、貿易を停止している北朝鮮だが、ごく限定的ながらも貿易を再開している。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は今年8月、恵山(ヘサン)市内の薬局と市場で売られている医薬品の価格が少し安くなったと伝えた。これは輸入停止で高騰していたものが、中国から医薬品が輸入されて価格が下落に転じたものと見られている。同様の現象は、平安北道(ピョンアンブクト)新義州(シニジュ)でも報告されている。

それから3カ月。再び医薬品の価格が上昇を始めた。医薬品不足が深刻化する中、アヘンや覚せい剤を薬の代用として使って中毒死する事件も起きている。
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別の情報筋は、恵山市場で先月中旬から医薬品の価格の上昇が見られると伝えた。

例えば、抗生剤のシプロフロキサシン1本が2万5000北朝鮮ウォン(約575円)だったのが、2万8500北朝鮮ウォン(約655円)まで上がった。同じ抗生剤でもペニシリンやマイシリンはそれぞれ3000北朝鮮ウォン(約69円)、1700北朝鮮ウォン(約39円)と比較的安価だが、偽物が多く使えないとの認識が広がり、消費者は多少高くてもシプロフロキサシンを好むという。

一方、肺炎、気管支炎、膀胱炎などに使うアモキシシリン1錠は、900北朝鮮ウォン(約20円)から1200北朝鮮ウォン(約28円)に上昇した。注射器や点滴の針は価格が乱高下している。

いずれも8月に輸入されたものが枯渇し、価格が上昇に転じたものと思われる。冬の到来と共に風邪をひく人が増えているが、薬も買えずに自然治癒するまで待つしかない状況だという。
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一方で、ご禁制の「あの薬」に手を出す人も増えていると、平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋が伝えている。

「(子どもが)お腹が痛かったり、下痢をしたりすれば、親はアヘンを与える」(情報筋)
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かつては下痢止め、抗生剤などは市場で買えたものだが、手に入らなくなり、比較的手に入れやすいアヘンを代用としていて使っているのだ。
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両江道のある協同農場で働いていた40代男性は、アヘンまたは覚せい剤を使用し、幻覚を見るようになり体重が極度に減少。最終的には栄養失調で死亡したという。地元の保衛部(秘密警察)は、彼が薬物を使用していることに気づいていたが、協同農場がワイロを渡してもみ消していたため、一切の措置が取られなかったとのことだ。