コロナ禍の北朝鮮「性売買」で感染症が拡大

最近、北朝鮮の住民の中での性感染症が蔓延しており、当局が対策に乗り出したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。コロナ渦のさなかで性感染症まで流行し、防疫当局の苦闘が続いているという。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民はRFAに対し、「最近、住民の中で、梅毒や淋病などの性感染症が急速に広がっていることと関連し、中央の緊急指令が5月29日に各地方防疫当局に通達された」としながら、「梅毒と淋病などの性感染症の感染実態を把握し、性感染症が広がらないように早急に対策を講じるよう指示する内容だった」と明らかにした。

住民はまた、「この指示に基づいて、保健省と市、郡の人民委員会(自治体)の責任幹部、人民病院長、社会安全部(警察)の幹部で感染実態の調査と治療を担当するタスクフォース『99号保健常務』が組織された。99号常務は速やかに感染実態を把握して、患者の隔離施設を作り、集中的な治療を通じて感染症を根絶させる任務を担っている」と説明している。

この住民によれば、「梅毒をはじめとする性感染症は、1990年代に多く発生して社会的問題となったが、積極的な治療と予防によって2009年ごろにはほとんど消えた」という。しかし、保健当局の警戒が緩むとともに、社会で売春行為が蔓延したせいで、再び感染症が急速に増加しているとのことだ。
(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

北朝鮮で売春は違法だ。刑法249条「売淫罪」では「売淫行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い者には5年以下の労働教化刑に処す」とされている。また、行政罰を定めた行政処罰法220条「売淫行為」は「売淫行為を行ったり、それを助長、仲介、場所を提供した者には罰金または3カ月以下の労働教養処分とする」としている。

これは、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」のころ、生きていくために売春を行う女性が増えたことに対処するために、2004年の法改正のときに新設されたものだが、その後も売春の摘発事例は枚挙に暇がない。

背景にはやはり、慢性的な経済難と庶民の生活苦がある。

両江道(リャンガンド)の住民はRFAに対し、「当局は売春が社会主義体制に反する違法行為であることを強調して取り締まっているが、コロナ禍のせいで生計維持が難しくなった人々は、処罰を受けるリスクを承知で売春を行っている」と指摘。「政府は無慈悲な取り締まりよりも先に、国民を生活苦から救う抜本的な対策を立ててこそ、売春や性感染症の問題も改善されるはずだ」と主張している。