「元帥様の愛に感謝感激」金正恩氏に水害被災者から”ウソの手紙”

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は21日、「全国の大家庭の慈悲深いオボイ(親)であらせられる敬愛する金正恩元帥様に謹んで申し上げます」というタイトルのつけられた長文の手紙を掲載した。

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「8月1日と2日の間に降った大雨で家を失い行き場を失ったものの、母なる党の限りなき愛を胸熱く受け取ったわれわれは敬愛する元帥様に一気に走り寄り、感謝のご挨拶、クンジョル(ひざまずいてお辞儀)を捧げたい気持ちを押さえられず、謹んでこの手紙を送ります」の一文で始まるこの手紙、差出人名は、「水害被害を受けた新興(シヌン)郡邑地区の住民一同」となっている。

新興郡を含む咸鏡南道(ハムギョンナムド)一帯は、深刻な水害の被害を受け、その復旧作業が行われているが、それに対して住民が厚い感謝の気持ちを筆にしたためたというものだ。だが、どうやらこの手紙、いわくつきのようだ。現地のデイリーNK内部情報筋が詳細を語った。
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朝鮮労働党咸鏡南道委員会は今月10日、新興郡の老党員と幹部の家族を呼び集め、元帥様への感謝の手紙を書くよう伝えた。
(参考記事:「被害復旧を強力に支援」咸鏡南道の水害で金正恩氏が命令

党委員会の宣伝部は「全国からかけつけて支援してくれている、元帥様の愛を積んだ救護物資も届いた、党の配慮に感謝するという手紙を差し出さなければならない」と言いつつ、その文面は既に準備できているので、最大限フォーマルな格好をしてやってくるように、老党員と幹部家族に命じた。

それがどうやら、労働新聞に掲載された手紙というわけのようだ。その一節を紹介しよう。

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〈全国の大家庭の面倒を見て、一日たりとも心安らかに休めずにいらっしゃる敬愛する元帥様が、われわれの不幸にあれほど胸を痛められ、咸鏡南道党委員会軍事委員会の拡大会議を招集され、被害復旧用の主な資材を国家予備分を解いて緊急保証してくださり、中央が財政、物質的に強力に支援することについて命令なされたという知らせを新聞と放送で伝え聞き、わたしたちは傷ついたこころに日の光のように暖かく差し込むその愛があまりにもありがたく、子どもたちも、大人たちも皆が喜びの涙、幸せの涙を流しました〉

美辞麗句で埋め尽くされたこの手紙、実情とは全く異なり、住民は激怒している。

「現在、住民は働いていた作業場、事務所、旅館、機関の建物で日々を過ごしている。ありもしない事実を作り上げ、感激の手紙を出して党と元帥様に喜びを伝える事業を優先させる宣伝事業を行っているのを見て、住民はどんな言葉で非難したら気が済むかわからないほどだ」(情報筋)

手紙では「送られてきた」とされている物資だが、実際には届いていない。住民は復旧作業に動員され、喜びと幸せの涙どころか「苦しみの涙」を流している有様だ。伝染病も広がっているようで、腹痛、下痢、発熱で苦しみ、飲み水すらまともに得られず、絶望している。住民は口々に、その責任は道の党委員会にあると語っている。

「昨年の水害のときに、委員会の責任書紀(地方のトップ)が辞めさせられたことを挙げて、その前と今と何も変わっていない、むしろ過度に忠誠(心を見せつけること)に没入していると非難している」(情報筋)

情報筋はまた、「クビになるのではないかとビクビクしながらゴマすりばかりして、嘘の報告をしている党委員会の幹部に問題がある」と批判しつつ、現状を嘆いている。
(参考記事:「将軍様の肖像画より人命重視」北朝鮮の地方当局に変化