「金与正が兵士ら10人を処刑」北朝鮮幹部が米メディアに証言

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は14日、北朝鮮・両江道(リャンガンド)の行政機関幹部の次のような証言を伝えた。

「最近、平壌でまたもや大きな単位の幹部が銃殺されたという情報が、道内の恵山(ヘサン)の幹部の間で広まっている。銃殺された幹部が正確に誰かは明らかにされていないが、今回処刑された幹部も金与正(キム・ヨジョン)が死に追いやったという話を伝え聞いた」

本欄で既報のとおり、脱北者で韓国紙・東亜日報の記者であるチュ・ソンハ氏は8日、自身のYouTubeチャンネルで、北朝鮮の朴泰成(パク・テソン)朝鮮労働党宣伝書記が処刑された可能性が高いと伝えた。チュ氏はその中で、党宣伝扇動部の副部長である金与正氏が歴代の部長たちと葛藤を抱えてきたと指摘している。もしかしたらRFAとチュ氏が明らかにした情報は、同じものかもしれない。

また、前出の両江道の幹部は、「昨年12月、恵山で起きた金塊の密輸事件が中央党(党中央委員会)に報告され、10人の国境警備隊の保衛部幹部と兵士らが銃殺され、9人の住民が無期懲役となり、数十人の家族とともに政治犯収容所に収監されたのだが、彼らに対する処罰も金与正副部長が自ら指揮したことが伝わっている」とも話している。

(参考記事:「気絶、失禁する人が続出」金正恩、軍人虐殺の生々しい場面

RFAは昨年、恵山の男女6人からなるグループが金塊の合計量は154.8キロを中国に密輸した容疑で逮捕された件を報じている。これが、両江道の幹部が語る事件と同一のものであるかは定かでないが、同じ時期に大掛かりな金塊密輸が2件も摘発されるとは考えにくく、どこかでつながりがあると考えるのが自然だろう。

いずれにせよ、北朝鮮で貴金属の密売は極めて重大な犯罪であり、刑法附則でも最高刑は死刑と定められている(文末参照)。

しかし法で定められている以上、司法機関が粛々と執行すれば済む話だろう。本当に金与正氏が処刑の指揮を取ったとすれば、宣伝扇動部副部長としての職務の範囲にしばられず、兄と同じ「超越的な権力者」としてふるまっていることになる。

【刑法第118条(貴金属、有色金属密輸、密売罪)】
貴金属または有色金属を密輸、密売した者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。大量の貴金属または有色金属を密輸、密売した者は5年以下の労働教化刑に処す。罪状の重い場合は5年以上10年以下の労働教化刑に処す。特に重い場合は10年以上の労働教化刑に処す。

【刑法附則第6条(極めて重い形態の貴金属、有色金属密輸、密売罪)】
貴金属、有色金色密輸、密売行為の罪状が極めて重い場合には死刑および財産没収刑に処す。