「平壌の悪童」たちが働いた鬼畜性犯罪の顛末

10年前といえば、2009年11月に行われた貨幣改革(デノミネーション)が大失敗に終わり、国中が大混乱に陥っていたころだ。生きていくために売春を行う女性が急増したと言われている。近年に入っても大規模な組織売春が摘発されている。

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検閲の結果、事件の原因である平壌医大の男子学生4人は今月10日、平壌市郊外の三石(サムソク)区域で、住民が見守る中で公開銃殺された。中央党幹部である親たちの処遇について、情報筋は言及していない。

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処罰はこれだけでは終わらなかった。

平壌医大の党委員会の幹部7人は、慈江道(チャガンド)の時中(シジュン)鉱山または狼林(ランリム)伐木事業所に追放された。信訴をもみ消した安全部のイルクン5人と、10年前の事件担当者は、黄海北道(ファンヘブクト)麟山(リンサン)郡の農場に追放(革命化)された。また、10年前の事件当時の保安署(警察署、現安全部)の幹部も責任を問われ、追放の処分を受けた。いずれも家族もろともで、追放者は60人にのぼる。

追放されても、平壌に呼び戻してもらえることもあれば、一生を山奥で過ごすことになる可能性もある。また、教化所(刑務所)や管理所(政治犯収容所)送りなど、さらに厳しい処分が下されることもある。

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大学に対する党的指導を怠ったとの理由で、党科学教育部に対しても思想検討が行われ、問題ありと見なされた幹部が更迭された。また、被害学生の母親の信訴を無視し、党に対する人民の信頼を天秤にかけたとの理由で、党信訴請願課の第1副部長など幹部4人も更迭される予定とのことだ。

さらには、新型コロナウイルス対策の非常防疫作業が行われている中で、加害学生がタクシーを乗り回し、全国で不健全な行為を行っていたことを見逃していた、首都防衛司令部と保衛部(秘密警察)の10号哨所(検問所)の担当者も、処罰の対象となる。

党上層部では、同様の事件が他の地方でも起きていないとは断定できないとして、全国の党組織、教育機関、司法機関に対する集中的な思想検討と総和(総括)を行うよう指示を下した。

今回の大々的な摘発について、平壌市民は肯定的な反応を見せている。

「幹部の家に生まれ、良い暮らしをしていた連中が、それ相応の罰を受けた」
「親が幹部なら子どもも幹部であるかのように振る舞う連中を、党がスッキリと処罰してくれればいい」
「普段から愛人をはべらし、社会を非社会主義風に染めた幹部はすべて銃殺すべきだ」

ただ、今回の取り締まりも一過性のものに終わるだろう。トランスペアレンシー・インターナショナルが毎年発表している腐敗認識指数で、北朝鮮は対象となった179の国、地域の中で172位。最下位だった2016年以前よりは改善しているが、国家組織全体が不正行為に侵されていることを考えると、摘発キャンペーン、公開銃殺、収容所送りなどでビビらせるくらいで、根絶できるものではない。