北朝鮮「女子大生200人」性売買事件の残酷な幕切れ

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じたところによると、今年7月、北朝鮮の首都・平壌で名門大学の女子大生200人が動員された大規模な組織売春が摘発された。

大浴場やプールを備えた総合レジャー施設「紋繍院(ムンスウォン)」の責任者が、有名映画俳優、平壌音楽舞踊大学、平壌演劇映画大学の教授らと結託し、在学中の女子学生に「1ヶ月に500ドル(約5万3000円)以上儲かる仕事がある」などと声をかけ、施設内のカラオケ店で売春をさせていたのだ。客は、中央や平壌市党(朝鮮労働党平壌市委員会)の幹部らだった。

教育当局は、大学に対して頻繁に「経済課業(ノルマ)」の指示を下し、上納金を集めている。大学はそれを学生たちに転嫁して、様々な名目で金品を納めることを強いていた。また、教授への付け届けなど、北朝鮮での学生生活は何かと物入りだ。紋繍院の責任者や教授らは、そんな女子学生の足元を見たのだ。実際、摘発のきっかけになったのは、売春させられるとは知らずに性行為を強要された女子学生による通報だった。

事件の幕切れは残酷なものだった。首謀者6人が公開処刑され、女子大生50人が処分されたのだ。

(参考記事:女性芸能人らを「失禁」させた金正恩の残酷ショー

もちろん、女子大生らをだました首謀者らの行為はきわめて非道な犯罪である。しかし、彼らが処刑されたことは、異なる次元の問題をはらんでいる。

北朝鮮で売春は違法だ。刑法249条「売淫罪」では「売淫行為を行った者は1年以下の労働鍛錬刑に処す。前項の罪状が重い者には5年以下の労働教化刑に処す」とされている。また、行政罰を定めた行政処罰法220条「売淫行為」は「売淫行為を行ったり、それを助長、仲介、場所を提供した者には罰金または3ヶ月以下の労働教養処分とする」としている。

しかし、違反者が死刑になり得るとの定めはどこにも見当たらない。つまりは件の6人は、超法規的に処刑された可能性が高いのだ。

北朝鮮は2019年初めまでの一時期、公開処刑を控えていた。理由はわからないが、金正恩党委員長が国際社会からの非難の目を気にしていた可能性が高い。それが再開されたのは、制裁の影響で国内の経済難が深刻化し、さらには治安の悪化につながるようになったからかもしれない。

それでも、人権に無頓着なトランプ氏が米国大統領の座にあり、彼と金正恩氏が良好な関係を保っていたこともあって、公開処刑の再開が国際的な非難の的になることはなかった。だがそうした状況も、バイデン次期政権が発足する2021年以降は、徐々に変化してゆく可能性が高い。